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WBC優勝で歓喜に沸く日本列島。いつか“第二の大谷翔平”を見てみたい

大谷の気迫が周囲に伝播

 8回に侍ジャパンは二つの適時打を浴びて2失点したが、その裏に1点を返すと9回裏にドラマを生み出すのである。  先頭の大谷が右中間を破る二塁打で出塁すると、ベンチに向かって「あきらめずにいくぞ!」の大号令。続く吉田が四球で歩くと、吉田も次打者の村上宗隆を指差し「決めろよ」と言わんばかりのポーズ。  村上はこれまで3三振と精彩を欠いていたが、3球目を捉えると左中間フェンスにぶち当たる適時打となった。大谷の気迫が形となって、劇的なサヨナラ勝ちを演出したのだった。

国内組の奮闘が最高の形を演出

 決勝戦はもはやクライマックスを意識したかのような展開で進んでいった。おそらく、投手の継投は決まっていたはずだ。リードしている展開なら8回をダルビッシュが、9回を大谷が担当とする。そのシナリオを完成させるために、侍ジャパンの選手たちは一つになっていた。  先発の今永昇太は2回に好調のトレイ・ターナーに先制のソロ本塁打を浴びるも、2回1失点で任務を完了。戸郷翔征へと繋いだ。特殊球を持つ戸郷はトラウト、ターナーから三振を奪う力投で2回を無失点。次に登板する最年少の髙橋宏斗に託した。 スプリットと157キロのストレートが持ち味の髙橋宏斗は、トラウトとゴールドシュミットを連続三振。こちらも無失点でバトンを渡した。  一方の打線は先制点を失った直後の2回裏、村上宗隆が右翼スタンド上段に突き刺さるソロ本塁打で同点とすると、その後も攻め立てて一死満塁からヌートバーの一塁ゴロの間に勝ち越した。さらに、4回裏には岡本和真が左中間にソロ本塁打を放ち、2点をリードした。  髙橋宏斗の後は、今大会好調の伊藤大海と大勢が1イニングずつを担当。ともに無失点で切り抜け、8回9回へと継いでいったのだった。
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主人公・大谷が締めたクライマックス
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新聞社勤務を経て、2003年にフリージャーナリストとして活動開始。『Number』(文藝春秋)、『slugger』(日本スポーツ企画)などの紙媒体のほか、WEBでも連載を持ち、甲子園大会は21年連続、日本シリーズは6年連続、WBCは3大会連続で取材している。2018年8月に上梓した「甲子園という病」(新潮新書)が話題に。2019年には「メジャーをかなえた雄星ノート」(文藝春秋)の構成を担当。 Twitter:@daikon_no_ken

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