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ラブホ初心者がおかしがちな「ホテル選びの間違い」/文筆家・古谷経衡

第30回 春こそラブホデビューの季節

ラブホテルの部屋

写真はイメージです

 新年度である。春から18歳になり大学生になった人間は、法的にラブホテルが利用可能となる。言わずもがな、風俗営業法第2条6項4号(所謂4号ホテル)に該当するラブホテルは、各自治体の青少年健全育成条例等の定めにより18歳であっても高校生である場合は利用ができない。利用した場合は、ホテル側が罰せられるのである。  一方、風営法4号の適用を受けないラブホテルはこの限りではないものの、基本的にはラブホテルの利用は高校生と大学生の間で利用に制限の線引きがある。よって重箱の隅をつつくようだが、新海誠監督『天気の子』で、学童3人が池袋のラブホを利用するシーンは、厳密に言わなくてもホテル側の条例違反行為であるので注意が必要である。要するに我が国のラブホは、高校を卒業さえすればその利用に制限は無い。よって春こそラブホテル・デビューの季節なのである。  休憩・サービスタイム・宿泊の原則三部で構成されるラブホの利用料金は、最も安い休憩を利用してもおおよそ三千円~四千円であることは既にこの連載の中でも繰り返し述べてきた。全世帯と青年層の総貧困化がますます亢進し、大学生の仕送り金額もそれに従って減少傾向にある中、たとえ最低三千円としてもラブホの費用捻出は決して安い決断ではないことは確かだ。

ビジホよりもラブホという発想

 2001年に大学生になった私は、その後『独りラブホ』に数百万(実際には500万円以上)を費やす好事家になる運命とはつゆ知らず、ラブホ利用は贅沢であると思って敬遠していたのであった。なぜなら大学に入って半年もするとアベックが随所に誕生してきて、〇〇のラブホに行ったという報告を側聞するようになったが、聞くところによれば1泊1万円程度というその値段の高さは、当時の大学生の仕送り額に対して1割に迫るものであって、とても気軽に利用する気にはなれなかった。  しかしそれは、ラブホのサービスタイムというシステムに無知なことから来る怖れであり、平日サービスタイムは夕方過ぎまで五千円程度で利用できるし、独りで利用しても全く差し支えないという法を知るのは、その数年後のことだったのである。    しかし高校を卒業して18歳になったばかりの青年に、独りラブホを勧めるのは些か酷である。ビジネスホテルの代わりにより快適なラブホテルを利用するという発想は、まずラブホ利用にある程度習熟しなければできない芸当である。  人類社会が原始共産制から奴隷制、封建制を経て資本制に発展・進化したように、ラブホ利用もまずはオーソドックスに異性と同伴で入って利用したのち、より高度な段階として独りラブホという形態に発展するのである。幾らこの季節がラブホデビューに絶好であっても、やはり正しい発展の手順を踏むことで、のち人生におけるより快適な独りラブホ生活に繋がると確信するのだ。
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ラブホデビューでバリアンの利用はオススメしない
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(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数

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