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「安倍元総理と旧統一教会のつながり」は常識。犯行の正当化ではない/古谷経衡

写真は首相官邸ツイートより

 7月8日に起こった安倍元首相の銃殺事件。戦後初めてとなる総理経験者の暗殺という、日本のみならず全世界に与えた衝撃の大きさから、事件から10日あまりが経った今でも各分野からの考察、分析が絶えず行われている。山上徹也容疑者(41)の母親が多額の献金を行なっていた旧統一協会と接点のあった安倍氏への殺意という動機も明るみに出る中、我々は今回の悲劇に対してどんなリテラシーを持ち、情報の取捨選択に努めるべきか。近代政治と宗教団体の関係に詳しい、文筆家の古谷経衡氏に聞いた。

結果として「テロ」と捉えていい理由

ーー今回の事件が報道された直後、古谷さんはSNS上で真っ先にテロ行為と断罪されました。今回の行為が、日本社会にとってどれほど深刻なことか、第一報を受けた7月8日時点での見解について教えてください。 古谷経衡(以下、古谷):今回の事件は、テロ(政治的目的を達成するための暴力等)か否かの見解が分かれていますが、今回の事件で政治的動揺が広がっており、社会はもちろん政治全般に対して間接的に影響を与えており、もしこのような影響までをも犯人が想定していたとしたら、犯人の主目的はともあれ、結果として広義のテロと呼んで差し支えないように思います。  日本社会の中で「手製の銃」で凶行に及んだことは、銃規制(猟銃免許等)の枠外にあるという意味で大きな衝撃です。第一報では右翼団体(一部の右翼団体は、安倍元総理への批判的向きもある)の仕業と思いましたが、違ったようです。

旧統一教会と政治家の蜜月は、歴史の常識

ーー犯人は旧統一教会に母親が多額献金をしたこと、そこに友好メッセージを送った安倍元総理に殺意を抱いたと動機を語っています。旧統一教会が信者家族の生活を破壊する可能性や、安倍元総理が旧統一教会と関係があったのは何故でしょうか。 古谷:旧統一教会は岸信介と、戦後右翼の二大フィクサーと言われた児玉誉士夫(鳩山自由党設立を支援)、笹川良一のラインで繋がっており、同時に反社会的勢力(戦後右翼)などと関係があり、かれらやその界隈が反共のスローガンのもと、1968年に国際勝共連合を設立したことは事実です。反共産主義(反共)を鮮明にして中国との国交回復(台湾断交)に反対したのが福田赳夫の清和会が誕生した要因のひとつでありましたが、前述したようにこの界隈は鳩山自由党の時代、さかのぼれば児玉誉士夫が統率した「児玉機関」(戦中の軍による戦略物資買い付け機関)と繋がっています。  また岸、児玉、笹川の三名はいわゆる「巣鴨プリズン」出所組であり、釈放後はアメリカの極東戦略(反共主義)が背後に見え隠れします。このような歴史から、自民党清和会は伝統的に反共で、旧統一教会や国際勝共連合との関係が最も強い派閥となりました。清和会のプリンスと言われ、岸の孫である安倍元総理が縁故関係により旧統一教会とつながりがあるという事実は、戦後政治史・戦後保守史を少しでもかじっていれば常識的で、皆知っています。  ただし、ソビエトが崩壊し反共の主敵を失った以降の旧統一教会とその関係団体は、バブル期のいわゆる「霊感商法」「合同結婚式」など世論から批判を受けたこともあって、右派界隈の中では存在感が弱まっており、代わって1990年代後半からは宗教右派の集合体である「日本会議」の方が権勢が強まることになりました。安倍元総理が旧統一教会と関係があったことは事実ですが、かつてほどの濃密な関係かどうかまでは断定することはできかねます。  また現在、旧統一教会は世論からの風当たりが強くなりましたが、宗教法人の団体名を2015年に「世界平和統一家庭連合」に改称し、イメージを刷新しようとしましたが、依然として金銭トラブル等に関する被害、訴訟が相次いでいる状況で、また教団の名前を隠して全国の大学構内などでダミーサークルを作って勧誘しているなどの報告は既知とされており、それによって家庭が壊れたりする被害がある事は否めない状況です。
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