恋愛・結婚

ゲイカップルのラブホ利用は、なぜ差別されるのか/文筆家・古谷経衡

ラブホ

第二十七回 ラブホテルとLGBT

 私の様な独りラブホテル愛好家にとっては関係のないこと、といっては極端な表現であるが、ラブホテルは「専ら異性同士が利用する場所」という固定観念がいまだ日本社会にはびこっていることは否定できまい。  ここでラブホの法的な地位について、本連載で繰り返し述べてきたが今一度整理する。ラブホは風俗営業法で規制される4号ホテルと、旅館業法で規制されるものの2つに大別されるが、4号ホテルは「風俗営業法第2条第6項4号」での届け出をしていると同時に、旅館業法の適用範囲内にある。つまり4号ホテルも非4号ホテルも、いずれも等しく旅館業法の適用を受ける宿泊施設である、という事が出来る。  旅館業法では、その第5条に、旅館営業者に対し次の義務を負わせている(括弧内筆者)。 第五条 営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。 一 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき。 二 宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞(おそれ)があると認められるとき。 三 宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。  要するに旅館業法では、基本的に特別の事情(満室等)が無い場合、宿泊拒否をしてはならないと定められているのである。ここに長年、ラブホをめぐる核心的問題が内包されている。  それはLGBTを代表とする性的マイノリティのカップル同士によるラブホの利用拒否問題である。とりわけ、男性同士のカップル、つまりゲイカップルにあっては、長年、業界の慣習としてラブホ利用の拒否が常態化していた。

ゲイでも泊まれるラブホを特別視

 私が関西で大学生をやっていたゼロ年代、よく専門学校の帰りに梅田近傍の東通りで飲むことがあった(私は、大学生活に嫌気がさして、梅田の映画系専門学校にダブルスクールをしていたのだ)。その時、東通り裏の堂山(大阪市北区)一帯にはキタ随一のラブホ街が形成されていたが(現在でもそうである)、ふらりと入ったゲイバー(正確にはMIXバーと言って、非ゲイでも飲める)のママから「あそこのラブホはゲイでも泊まれるので有名」というのを聞いた。  私はゲイでは無かったので、この話を大して気にも留めなかったが、この時初めて「ラブホテルは通常、ゲイカップルを宿泊・利用拒否する傾向がある」という事実を知った。後から考えれば、これは性的指向を理由として宿泊・利用拒否をするれっきとした旅館業法違反なのだが、当時はそういった風潮が自明の事として許容され、ゲイカップルは人づてで聞いた「ゲイカップルでも利用できるラブホ」をわざわざ選別して利用していたという。  つまりある時期までは、ラブホはゲイカップルを宿泊・利用拒否する法的根拠を有していないのにも関わらず、その違法行為が平然と行われており、ゲイカップル側もそれを十分に認識し、渋々受け入れていたという事である。  こうした違法事例が大きな社会問題になったのは、LGBTへの社会的認知が深まり、彼ら彼女らの社会的差別が問題であるとクローズアップされたここ十年程度の事である。 ・2016年、大阪府池田市のラブホテルでゲイカップルが宿泊を拒否され、同市の保健所がホテルに行政指導。 ・2020年、男性カップルの宿泊を断ったとして、兵庫県尼崎市が市内の2軒のラブホテルに対して、旅館業法に基づく行政指導。 (いずれもOUT JAPAN より引用・抜粋)  こういった事例は氷山の一角であるが、ラブホテルは「専ら異性同士が利用する場所」という固定観念がいまだ日本社会にはびこっている中、実際の現場においては、なお以てゲイカップルの利用を拒否している事例はあり得ると思われる。  前掲した旅館業法第5条では、満室の場合は宿泊拒否を正当としている(―提供できる室が無いのだから当然ではある)。通常、ラブホのフロントでは犯罪防止等の観点から、カメラによってロビーの状況を係員が見定めている場合が多い。
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独りラブホ民への迫害も
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