更新日:2023年06月09日 19:45
お金

朝日新聞の苦しい懐事情。“平均年収1千万”「人件費削減」は成功したのか

「100億円程度の人件費削減」は成功したのか

 朝日新聞社は、原価に占める労務費の他に、販売管理費の給与手当も削減していました。この給与手当は管理業務などを行う人件費が大部分を占めます。  2021年3月期の給与手当は194億円で、2022年3月期は185億円でした。9億円削減しています。
朝日新聞

販売管理費の明細(2021年3月期及び2022年3月期) ※有価証券報告書より

 これも希望退職者募集などの人件費削減策が寄与したものと考えられます。2022年3月期は労務費と給与手当において、100億円以上をカットできています。それでも2023年3月期は赤字となりました。減収ペースが想定していたよりも早く、リストラ効果がそれに追いついていない可能性があります。

販売管理費の削減効果も働かない

 朝日新聞社の苦境は個別決算で見ると、もう少しわかりやすくなります。下の表は過去3期の損益計算書をまとめたもの。2021年3月期と2023年3月期は営業赤字ですが、その質が大きくことなることに注目してください。  2021年3月期は他と比較して販売管理費が大きく膨らんでいます。2023年3月期の販売管理費は2022年3月期とほとんど金額の変化がありませんが、赤字に陥っています。
朝日新聞

朝日新聞社個別決算(単位:百万円) ※有価証券報告書より筆者作成

 朝日新聞社は2021年3月期に会社単体で17億4400万円もの退職給付費用を計上していました。これは希望退職者に支払われるものだと考えられます。2022年3月期の退職給付費用は1200万円まで縮小しています。  また、2022年3月期から販売管理費の中の販売費を大幅に削減し、700億円台から400億円台まで縮小しました。2023年も同じく400億円台で推移していますが、黒字化ができていません。やはりリストラ効果が働いておらず、恒常的な赤字体質になっているように見えます。
次のページ
平均年収は1100万円
1
2
3
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ