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「アジアの玄関口」なのに国際線からバスしかない…福岡市地下鉄七隈線の延伸は“街を変える”引き金となるか

「離れ小島」七隈線が真の姿に

七隈線

「七隈線及び全線の利用状況(1日あたりの輸送人員)」七隈線はコロナまで一貫して増加傾向にあった(画像:福岡市交通局)

 それでもなお、七隈線天神南駅は2005年2月の開業以来長らく、既存の空港線天神駅と約600m距離のある“離れ小島”であり、天候に左右されない天神地下街や乗換時の特例運賃をもってしても、博多方面への移動に一手間ある状況が続いていた。  七隈線天神南駅開業により、従来天神の一等地であった百貨店「旧岩田屋本館」(現在の福岡パルコ本館)から離れた天神南~薬院駅間においても、2004年9月に「BiVi福岡」(地元民放本社跡地)、2007年11月には「天神ロフトビル」(旧山紘電線ユーテクプラザ・ジークス天神/現在のLuz福岡天神)といった商業施設が開業するなど、福岡市中心部の商業集積を広げ、投資を促進する効果もあったが、七隈線自体は天神での乗換という負担を理由にバスを利用する住民も依然として少なくなかった
七隈線

渡辺通りを挟み対面する西鉄福岡(天神)駅と福岡市地下鉄天神南駅。天神南駅は天神の商業の重心を南に動かす契機となる新駅でもあった。天神南駅には「博多まで3分」アピールも(写真:淡川雄太)

急浮上した「参考ルート」

 実は七隈線は2005年2月の開業時点で「都心部の未整備区間」を残していた。七隈線は1995年3月の橋本~天神間鉄道事業免許申請以前、すでに博多方面への路線整備を念頭に置いた計画策定を進めていた。七隈線の全体計画はあくまで全長16km(橋本~博多方面)であり、「緊急整備区間」の12km(橋本~天神南駅)のみ先行して開業したという状況だった。  福岡市では都心部の未整備区間解消に向けて、「ウォーターフロントルート」(約2.3km)と「薬院博多駅ルート」(約2.5km)方面への延伸を検討していたが、両ルートともに事業費約800億円(2007年当時)が必要であることに加え、累積損益の黒字化に悪影響を及ぼすため、両ルートが抱える費用対効果の課題を解決可能な現在の「天神南博多駅ルート」(約1.6km)が「参考ルート」として急浮上した。  福岡市は各ルートの比較検討をしたうえで現実的な選択として、2012年6月に天神南博多駅ルートの鉄道事業許可を取得し、2013年12月に延伸を着工。2023年3月27日に未整備区間の解消を果たしたことで本来あるべき姿となった
七隈線

ウォーターフロントルートと薬院博多駅ルート。七隈線延伸区間着工後も建設に至らなかった両ルートは「長期的検討区間」となった(画像:福岡市交通局)

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“攻め”の設備投資で利便性を強化
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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