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「アジアの玄関口」なのに国際線からバスしかない…福岡市地下鉄七隈線の延伸は“街を変える”引き金となるか

さらなる延伸に期待の声も

 福岡市地下鉄には七隈線天神南~博多駅に次ぐ、さらなる延伸に期待の声もある。  福岡市地下鉄箱崎線では、都市交通審議会答申以来、西鉄貝塚線(旧宮地岳線)との直通運転が視野にあり、1997年2月には「福岡都市交通問題協議会」において相互直通運転の実現に向けて検討を行うことの合意もなされた。  同合意に基づき、福岡市・西鉄間では乗り入れを目的とした第3セクター設立といった協議も一時期はみられたが、2021年1月の「福岡市交通対策特別委員会」においても、西鉄がコロナ禍にともなう経営状況から新規投資が困難であること、事業化に必要な補助採択の基準を満たすことが困難な状況であることから、事実上凍結状態にある。  福岡市地下鉄空港線でも、JR福北ゆたか線長者原駅方面への延伸構想があり、2021年度には福岡県により「福岡市地下鉄空港線とJR福北ゆたか線の接続に関する基礎調査」が行われたが、2022年の試算発表では候補となった4ルートとも赤字となっており、七隈線延伸計画策定時と同様にさらなる精査検討が必要な段階にある。

公共交通でのアクセスの見劣りは否めない

七隈線

福岡市地下鉄空港線とJR福北ゆたか線の接続に向けた4ルートの試算結果。いずれも開業40年間の収支採算性は赤字であり、さらなる精査検討が必要と結論付けている(画像:福岡県)

 福岡市地下鉄空港線の延伸や箱崎線と西鉄貝塚線の直通運転が暗礁に乗り上げるなか、2022年11月に高島宗一郎福岡市長は福岡市地下鉄七隈線の福岡空港国際線エリアへのさらなる延伸を打ち出した。  七隈線の福岡空港国際線エリアへの延伸は、あくまで「検討案のひとつ」であり、空港線貝塚線での各種構想と比較しても調査や検討実績に乏しいが、福岡空港国際線ターミナルは「アジアの玄関口のシンボル」「世界有数の都市型空港」という立ち位置とは裏腹に、国内線航空路線や福岡市地下鉄空港線福岡空港駅への乗り継ぎには、約15分間の無料連絡バス乗車が必要不可欠であり、鉄道駅を併設する国内他地域の主要空港と比較した場合、公共交通でのアクセスの見劣りは否めない。
七隈線

コロナ禍に導入された定員従来比2倍の連節バス。ベンツのエンブレムが輝く快適な車体であるが、時間帯によっては積み残しが生じることも(写真:淡川雄太)

 福岡空港の運営会社は、2021年4月に無料連絡バスを連節バス化することで、混雑の常態化や積み残しの解消をめざすとしていたが、2023年現時点においてもインバウンド需要の急速な回復を受けて積み残しがいまだ解消できていないという課題を抱えている。また、無料連絡バスを運行する西鉄グループも、バス保有台数日本最大となる約2700台を誇るもの、バス業界共通の課題として運転手不足を抱えている。
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福岡市中心部へのアクセスには依然として難が残る
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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