仕事

「アジアの玄関口」なのに国際線からバスしかない…福岡市地下鉄七隈線の延伸は“街を変える”引き金となるか

天神の重心を南に移した「七隈線」

七隈線

七隈線延伸開業から1か月後に新装開業した当日朝のミーナ天神。ファストリ旗艦店として九州最大のユニクロを始め30超のテナントが揃う(写真:淡川雄太)

 2005年2月に天神の重心を南に移した「七隈線」であるが、延伸開業により福岡市地下鉄では天神での乗換需要が消滅することとなる。鉄道路線の再編はしばしば、地域間競争の引き金となり、九州を代表する交通結節点・商業集積地としての座をかけて歴史的に競い合う「福岡(天神)」「博多」の力関係にも影響を及ぼしそうだが、天神素通りといった心配は杞憂といえそうだ。  福岡市は2014年5月の国家戦略特別区域指定を機に、2015年2月に天神駅・天神南駅周辺で「天神ビッグバン」、2019年1月には博多駅周辺で「博多コネクティッド」と称する規制緩和プロジェクトを始動しており、福ビル街区や旧大名小学校跡地など、航空法や都市計画法改正との兼合いで進まなかった老朽施設の建替再開発や高層施設の新設が相次いでいる。  既存の施設においても、2023年4月28日にファーストリテイリング(ユニクロ)系のファッションビル「ミーナ天神」が増床新装開業、福岡三越が100円ショップ「ダイソー」の大型複合店舗を導入、大丸福岡天神店が大型アウトドア用品店「好日山荘」を導入するなど、各社今までにない取組みを打ち出しており、天神の求心力に陰りはなさそうだ。

発展を願い「福博連理」と揮毫

七隈線

福岡三越9階空港型市中免税店跡の「DAISO」「Standard Products」「THREEPPY」。三越伊勢丹グループ百貨店館内への100円ショップ出店は異例だ(写真:淡川雄太)

 七隈線延伸開業区間沿線においても、2022年2月に博多区役所新庁舎が完成、2023年3月には福岡地所による複合商業施設「キャナルシティ博多イーストビル」建替が正式発表、2023年4月には櫛田神社・石蔵酒造(博多百年蔵)による複合施設「宮前迎賓館 灯明殿」が開業するなど、商人の自治都市として発展した博多の歴史的資源や交通利便性を活かした開発がみられている。
七隈線

2011年9月に開業したキャナルシティ博多イーストビル。七隈線櫛田神社駅(写真右手)開業にあわせ、延伸を祝う垂れ幕も掲げられたが、建替えのため2023年5月をもって短い歴史に幕をおろした(写真:淡川雄太)

 高島宗一郎福岡市長が「福岡」と「博多」のさらなる結び付きと発展を願い「福博連理」と揮毫した通り、七隈線は福岡市全体のパイを広げる役割を果たしそうだ。
七隈線

福岡市地下鉄七隈線博多駅に掲げられた「福博連理」の銘板。わずか1.6kmの延伸区間であるが、福博の街とその先を結ぶ路線として存在意義は大きい(写真:淡川雄太)

七隈線

2022年11月にはJR九州グループ(JR博多シティ)が西鉄グループのお膝元である天神で商業施設「VIORO」の管理運営に乗り出した(写真:淡川雄太)

次のページ
さらなる延伸に期待の声も
1
2
3
4
5
6
7
都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ