肉のハナマサ、スーパー玉出。東西の2大“ローカルスーパー”が異例の提携。大量閉店、暴力団関与…「挫折からの再起の行方」は
全国的な知名度を誇る東西2大ローカルスーパー「肉のハナマサ」「スーパー玉出」が、6月14日に両社共同での新規事業と玉出一部店舗の花正化を軸とした業務提携を打ち出した。
花正は1923年に東京都江戸川区平井で創業。創業当初は生花店であったが、精肉店に業態転換し、1977年に焼肉バイキング店の1号店として「肉のハナマサ幕張店」を開店。低廉な仕入調達網を活かし、当時としては斬新な食べ放題を導入したことで首都圏を中心に急速に多店舗化した。
1983年には現在の主力業態である精肉主体の食品ディスカウント「肉のハナマサどっきり市場銀座店」を開店。翌年1984年には山口県地場大手食品卸「藤本商店」とFC契約を締結し、地方初出店するなど将来的な全国展開を見据えた施策を打ち出した。
1985年にはドイツ人ルドルフ氏招聘により本社付近にハム・ソーセージの生産工場「ルドルフハム工場」を開設。自社製造商品を全国の百貨店やスーパーに供給開始するなど、業界随一といえる商品開発力を備えるようになった。
同時期に小売飲食の複合業態「ミートパビリオン」を確立したことで、酒販大手「やまや」を始めとする地場流通大手各社との提携に繋がり、北海道から九州まで全国に店舗網を敷くこととなった。
1990年代には精肉ディスカウントから業務用食品スーパーとして転身を図り、看板商品「プロ仕様」を始めとする自社企画・自社製造大容量商品に特化した業態店舗に順次刷新。外食事業に関しても中韓東南アジアやモンゴルなど海外への積極展開を図ることで、同業他社が未開拓の市場で徹底的にシェアを獲得していた。
花正は2003年10月に伊藤忠商事系を母体とする中堅コンビニ「チコマート」に対し、同業他社との競争やBSE問題に晒されていた外食事業を1桁店舗のみ残し売却。外食事業の穴を業務用食品スーパーの積極出店で補う事業戦略を採り、2008年初頭には首都圏一帯に食品スーパー102店舗を展開するなど急拡大を図った。
東京都心部では珍しいディスカウント業態として、花正ファンを公言する芸能人も現れるようになるなど、知名度は全国的なものとなるが、業務用食品スーパー特化という事業戦略は経営基盤の脆弱化につながり、同年2月には一転して店舗の半数弱(47店舗)を一斉閉店する事態となった。
突然の提携発表は、SNSを中心に幅広い層から注目を集めたが、両社ともに実は過去に「大きな挫折」を経験し復活に向けて突き進んでいる最中だった。「ロピア」「オーケー」進出で地殻変動が進む「激戦区」でどういった戦略を採るか、それぞれの歴史を紐解きつつ今後の展望をみていきたい。
当初は生花店だった「肉のハナマサ」
時代を先取りしすぎた業務用食品スーパーの老舗
『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken
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