「アジアの玄関口」なのに国際線からバスしかない…福岡市地下鉄七隈線の延伸は“街を変える”引き金となるか
大陸との地理的条件や歴史的な交流関係により“アジアの玄関口”と称される福岡市。その中心部「天神」と「博多」を結ぶ地下鉄路線「福岡市地下鉄七隈線」が2023年3月27日に延伸開業を迎えた。
福岡市地下鉄の整備は、1971年3月の都市交通審議会答申第12号「福岡市及び北九州市を中心とする北部九州都市圏における旅客輸送力の整備増強に関する基本的計画」において、福岡市への「都心部から西南部方面に至る路線」「都心部から箱崎方面に至る路線」「都心部から福岡空港方面に至る路線」の新設必要性が示されたことに遡る。
答申に基づき、1973年12月には福岡市議会が高速鉄道の建設・経営を決議し、1981年7月に福岡市交通局による福岡都市高速鉄道1号線(空港線)の室見~天神駅間、1982年4月に2号線(箱崎線)の中洲川端~呉服町駅間が開業した。その後、1983年3月に1号線(空港線)が現在の博多駅周辺まで、1993年3月に福岡空港まで延伸することで、空港アクセス鉄道としての役割も担うこととなった。
さらに2005年2月には3号線(七隈線)の橋本~天神南駅間が開業し、福岡市西南部方面に路線を拡大。2012年6月には七隈線天神南~博多駅間の鉄道事業許可を取得し、2013年12月に同区間への延伸を着工した。
福岡市交通局は七隈線延伸区間の開業時期を当初、2020年度と見込んでいたが、2016年11月に区間の要となる博多駅前で陥没事故が発生したことで事態は一変。公共インフラの寸断や商業施設の閉鎖、有力地銀グループのサービス停止を引き起こすなど、連鎖的な影響を及ぼした。
一方、陥没事故は的確な初動対応が功を奏し、人的被害なく、わずか1週間という異例の短期間での復旧を果たしたため、日本国内にとどまらず諸外国より注目を浴びることとなった。
福岡市交通局では、陥没事故の教訓を活かした安全な再掘削体制構築のため、開業時期を2020年度から2022年度に延期。建設需要・物価上昇や利便性拡充、再掘削や地盤改良のため、事業費を約450億円から約587億円に増額した。この後も、コロナ禍による事業費のさらなる増額といった厳しいハードルが立ち塞がることとなるが、9年の工期を費やし延伸区間の開業を果たすこととなった。
ここからはなぜ、福岡市によるわずか1.6kmほどの地下鉄路線延伸が、“アジアの玄関口”の今後を左右する路線として、街の姿を大きく変える“引き金”としての可能性を秘めているのか、その全貌を明らかにしていきたい。
七隈線の延伸区間はわずか1.6km、徒歩20分ほどの距離しかないが、“アジアの玄関口”の今後を左右する区間として、街の姿を大きく変える“引き金”としての可能性を秘めている。
コロナ禍乗り越え延伸開業
陥没事故や物価上昇も…
『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken
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