更新日:2023年07月09日 10:35
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すき家と「吉野家・松屋」で明暗が分かれる理由。“回転寿司事業”が大きなアドバンテージに

「吉野家・松屋」と明暗が分かれた理由

レストラン事業は競合他社と同様に業績が悪化している一方、牛丼事業は堅調に推移しました。主力のすき家に関しては、冬季恒例の鍋定食メニューをアルミ皿で提供するなど、テイクアウト対応を迅速に進めたことや、ロードサイドという立地が好成績の要因としてあげられます。 対照的に都市部の駅前や事業所街に重点を置く吉野家・松屋は業績が悪化しました。さらに、コロナ禍では旅行できない間のちょっとした楽しみとして回転寿司業界の需要が伸び、「はま寿司」を擁するファストフード事業も堅調に推移しました。 値上げラッシュが続く中で低価格戦略を続けたことも、はま寿司が好調を維持した要因の一つです。北米のAFCによる「その他事業」は巣ごもり需要に支えられ、図らずもテイクアウト専業という形態がプラスに働きました。 なお2023/3期は消費者の行動パターンが正常化したことに加え、値上げが全社売上高の増加に寄与しました。すき家に関しては値上げしても来客数は減少しなかったようです。値上げにより営業利益は前年の2倍以上に伸び、5月の決算発表以降、ゼンショーの株価は上昇し続けています

不調ロッテリアは復活なるか?

ゼンショーの決算資料や実際の動向を見ていくと、今後同社は国内外でM&Aを加速させながら製造から店舗販売までを担うマス・マーチャンダイジング・システム(MMD)として規模を拡大させるようです。簡単に言えば生産・店舗運営・物流システムを統括する大手飲食チェーンとして成長し続けることを意味します。 国内では2023年4月に「ロッテリア」をロッテホールディングスから買収しました。ロッテリアはコロナ禍で業績が悪化しましたが、ゼンショーは自社システムとのシナジー効果を期待しているようです。 一方、海外では既に「すき家」を650店舗以上展開しているものの、牛丼チェーンではなくテイクアウト専門の寿司店による拡大を続けています。前記のAFCの他、2023年5月にはドイツで同様の業態を展開する「Sushi Circle Gastronomie」を買収しました。 米英で同じくテイクアウト寿司店を展開する「SnowFox Topco Limited」も買収予定とのことです。国内では牛丼のイメージが強いゼンショーですが、将来的には寿司チェーンの世界的企業にまで成長するかもしれません。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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