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「『あいのり』主題歌で新しい景色に」川嶋あい、“母の命日”恒例ライブに終止符、路上時代の思い出を語る

東京は「繊細で今生きている人でいっぱい」

――そんな路上ライブをやっていく中で、印象的な出来事はございますか? 川嶋:ほとんど渋谷駅のハチ公前の、今だと喫煙所のあたりで歌っていたんですけど、女子高生からお年寄りまで、いろんな方が通り過ぎていくなかで、みなさんが自分の人生と私の歌を重ね合わせているのかな、と思う瞬間があって。  歌い終わった後に「毎日苦しくて悩みながら学校に行っていたけど、歌を聴いて励まされた」という高校生の女の子がいたり、「会社で辛いことがあって、死にたい思いでいっぱいだったけど、歌声を聴いて心が穏やかになったよ」と声をかけてくれるサラリーマンの方がいたり……東京という街が、ものすごく繊細で今生きている方たちの溢れ出す想いでいっぱいの場所なんだな、と実感しました。  今は同じ場所ではもう路上ライブできませんよね。渋谷の街も大きく変わったなと思います。

「旅立ちの日に…」は卒業式の定番に

川嶋あい――I WiSHを解散後もソロでさまざまな楽曲を発表し、たくさんのステージに立たれています。毎年「旅立ちの日に…」を引っ提げて卒業式のサプライズライブも行っていますよね。 川嶋:あの瞬間は、胸が熱くなって、自然と涙がこみ上げてきちゃいますね。歌のイントロを聴いた瞬間に泣き出しちゃう子がいて。自分が「こんなに待っていてくれたんだ」と思える場所に立ち会えるのが嬉しいですし、特別な空間だなと思います。 ――被災地にも何度も訪れていらっしゃいます。どんなお気持ちで向かわれているのでしょうか? 川嶋:「自分が」というよりも、届ける音楽や歌が「楽しみ」であってほしいんですよね。少しでも悲しみや嫌なことを忘れてもらう瞬間を作るにはどうしたらいいのかを考えつつ、現地に行きたいと思っています。  やっぱり悲しみってくらべられないですし、目に見えないものじゃないですか。自分の歌を聴いて楽しい気持ちになる人がいるかもしれない反面、中には届かない人もいる。でも、希望が増える可能性が1パーセントでもあるなら、行かせてもらいたいなと思っています。
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挫折や絶望は常にある。それでも前を向く
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1984年生まれのライター。お笑い、ドラマ、映画などのコラム・インタビューを担当。Twitter:@mhmhhmhm18
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