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「男が性被害に遭うはずがない」いまだ残る社会の無理解と偏見。男性のレイプ被害の実態を探る

加害者も男女では明確な違いがある

 加害者には男性も女性もいるが、両者に明確な違いがある。加害者の治療に取り組む「性障害専門医療センター(SOMEC)」代表理事の福井裕輝氏は指摘する。 「男性の場合は、単純に性的嗜好が子供に向かう傾向が強い。子供であればすべてがターゲットになりうるので、対象は不特定多数です。ところが女性は恋愛に似た感情から発展するので、他の男にはまるで興味がないということが多いように思います」  被害者が、加害者になってしまうケースも少なくない。福井氏は続ける。 「海外では加害者の8割以上が幼少期に、性的虐待を含む肉体的な虐待やネグレクト(育児放棄)などの被害を受けているというデータが出ています。日本でも似たような傾向があり、当センターに来る患者の約4割に性的被害を受けた経験があります」

実態が見えにくい男性の性被害

男の性被害実態 被害者に目を転じると、内閣府男女共同参画局の報告書(’22年)によれば、16〜24歳の男性の5.1%が身体接触を伴う性暴力被害に遭っている。女性の8.7%よりは低いものの、一定数が被害に遭っているのだ。言葉による性暴力被害に遭った男性は、11.2%に上る。  警察庁によれば、’18年以降、強制性交等の認知件数は年間1300〜1400件に上るが、うち男性の被害は50〜70件。だが、これは氷山の一角にすぎない。 「弱さを認めたくない『ウィークネス・フォビア』(弱者嫌悪)を持つ男性は少なくない。被害に遭った自分や、負けてしまった自分を受け入れられないのは、男性のほうが強いのです」(川本氏)
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「発達の段階で性的虐待を受けると、性を歪められてしまう」
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