更新日:2023年08月16日 14:18
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「高麗航空が怖い」中国人の行動変容で生じる中朝国境開放の思わぬ余波

「陸路越境」を希望する中国サイド

非日常感が味わえると日本人の人気が高い国際列車

非日常感が味わえると日本人の人気が高い国際列車

 北朝鮮への渡航手配する旅行会社へは、すでに中朝往来再開を見据えて、投資視察などの目的での訪朝について問い合わせが入っている。  ただ、それらの問い合わせの多くが「丹東(遼寧省)からの国際列車、陸路での越境」を希望しているそうだ。  コロナ後は、「中国人の行動変容が起きているのではないか?」と旅行会社の担当者は話す。  中には、定期便実績がある「中国国際航空の機体を飛ばせないのか?」などの要望もあるようだが、時間よりも安全を選択して、丹東駅から8時間ほどかけて約200キロ・メートル先の平壌駅を目指すということだろう。  中国では近年、新幹線(高速鉄道)が全土に整備されている。当然、移動時間を少しでも短くしたい。早く行きたいという中国人のニーズに応えるものだ。  コロナ禍前まで、金銭的に多少余裕がある中間層だったら、北京や上海から2時間ほどで行ける空路・高麗航空での北朝鮮旅行を楽しんでいた。  国際列車を利用するのは、中国国内旅行よりも安くなった北朝鮮への数十人での格安団体旅行や、多くの貨物をハンドキャリーするような商売人などだった。それでも日常的に満席になるなど、乗車率が高い状態でコロナ禍へ突入した。

予想される「陸路便」のチケット高騰

 今まで空路を利用していた中国人たちが、国際列車へシフトする行動変容が起こると、どうなるのか。  国際列車の乗車券の高騰化、つまり、プレミアチケットとなる可能性が考えられる。  もし、こうなると、日本人や外国人も他人事ではない。国際列車のチケットプレミア化の影響を受けて、日本人は国際列車への乗車が困難になるかもしれない。  なぜなら、中朝を結ぶ国際列車は、2か国の国民が最優先される仕組みだからだ。  2か国だけを往来するので、両国で協議し、両国の利益のために運行されるので当然と言える。外国人は、いわば、おまけにすぎない。  たとえば、丹東発の国際列車は、中国側がチケット販売権を持っている。平壌発だとその逆となる。  中国側で販売するのは、丹東駅や全国主要駅や路線などを管理する国営の「中国国家鉄路集団(中国鉄路)」。  乗車券は、国営の旅行会社へ配布されて販売される。民間の旅行会社は、そこから購入するという流れで平壌への国際列車の乗車券は販売されている。  今まで中国国外の旅行会社は、中国の旅行会社へのコネを使って購入できていたが、コロナ後は、中国人優先で、日本人までチケットが回ってこなくなる事態も予想される。
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日本人が訪朝する場合の2つの壁
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なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID @you_nakano2017

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