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「毎月7万円の仕送り」を強要された30代女性…“毒親の洗脳”を解いた婚約者の一言

「人事評価のような基準」で褒められた

 当然、就職先も母親の顔色ひとつで決めた。 「母はキャリアウーマンでしたが、資格のようなものがありませんでした。私が進路を決める際、母もこれからの自分のキャリアを悩んでいたらしく、『女こそ、手に職をつけないと』と呪文のように言われました。結局、歯科衛生士という職業も、家から近い距離に専門学校があって、一生食いっぱぐれない仕事という点で選びました」  母親とは距離感がありながら、実家に暮らし続けた理由を岡本氏はこう話す。 「共依存でしょうね。母は子どもに対して“掛け値なしに可愛い”みたいな感情のない人で、褒めるとか叱るは厳正な基準のもとに行われていたように今になって思います。大げさに言えば、人事評価のような感じで、たとえば授業参観や運動会についても『この点は評価できるけど、あの発言は感心しないわね』とか。指摘は的確だと思うのですが、子どもとしては、もっと純粋に褒めてほしかったというのはありますよね」

母は精神を病み、弟は不登校に…

 状況が変化し、実家暮らしは義務と化した。 「仕事で理不尽なことがあったらしく、母は目に見えて精神を病みました。同時に、自分と離婚し、養育費もよこさない父親の悪口を延々と言い続けるようになりました。ちょうど連鎖するように、弟も不登校になり、家を経済的にも精神的にも支える役割を担わされました」  退職してパート勤務になった母親は、これまで岡本氏が家に入れてきた家賃の値上げを要求した。家族間の摩擦を避けたい氏は、それを承諾するしかなかった。 「気が付くと、『今日は勉強会だから』とか嘘をついて、仕事帰りにカフェでひとりコーヒーを飲んだりしていました。そのとき初めて、『家族から逃げたい』という自分の本音に気づいてしまったんですよね」
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実家を出る条件は「毎月7万円の仕送り」
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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