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「誰も傷つけない笑いは綺麗事」アフリカ人父の映画を撮った“ハーフ芸人”武内剛が語る、今のお笑い

『エンタの神様』で注目されたネタは今…

ぶらっくさむらい――ぶらっくさむらいさんは約10年前に「ハーフ芸人」として注目されて、その頃は自虐ネタのようなものもやっていたじゃないですか。そういうのも今だったらできないと思ったりしますか? ぶらさむ:それもありますね。僕自身も日々アップデートしながら生きてるので、これは今はやらないほうがいいな、って思ったりすることもありますし。昔、『エンタの神様』で僕の自虐的なネタを見た黒人ハーフの中学生の子から、ツイッターでリプが飛んできて「ネタを見ました。僕は全然笑えませんでした。ぶらっくさむらいさんがこういうネタをやると同級生にからかわれます」って言われて。  そのときにはDM(ダイレクトメッセージ)で長文のやり取りをしました。最終的には彼も納得してくれて、武内さんみたいに強く生きます ありがとうございました、って言われたんですけど。  その子がそう応えてくれたときはちょっと泣きそうになりました。僕もたぶん、14歳ぐらいのときにテレビで自分と同じ黒人ハーフの芸人が見た目のことをネタにしていたら、同じようなことを思ってたかもしれないな、っていうふうに感じたんです。

ありのままを受け入れてくれる人が増えた

ぶらっくさむらいぶらさむ:今だとバスケの八村塁さんとか、テニスの大坂なおみさんとか、EXILEのNESMITHさんとか、いろんなロールモデルがいるじゃないですか。その一方で、マテンロウのアントニーとかデニスの(植野)行雄ちゃんとか、僕みたいなコメディ系もいる。  かっこいい系だけじゃダメで、そういうのが全部あっていいと思うんですよ。それが本当の多様性だと思うんですよね。そういうのを見ることによって、日本人全体の価値観がちょっとずつアップデートされていくんじゃないですか。  実際、僕も肌感覚として10年前ぐらいとは見られ方が変わってきた感じがするんですよ。10年前だったら、僕が流暢な日本語で誰かに話しかけたら「日本語、上手いですね」って驚かれることが多かった気がするんですけど、最近は普通に受け入れられることが多いんですよね。まあ、東京だけかもしれないですけど、ありのままを受け入れてくれる人が増えてきたような気がします。
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お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『教養としての平成お笑い史』など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで

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