ライフ

“糖質オフ”が「思いがけない難病」を引き起こす…実は間違いだらけだったダイエットの常識

糖尿病の人の方がアルツハイマーになりづらい?

60歳からはやりたい放題[実践編] 糖は認知症予防にも効果があると私は考えています。  事実、高齢者専門の総合病院である浴風会病院に勤務していた頃、病院内では「糖尿病の人はアルツハイマー型認知症にならない」という共通認識がありました。  実際に糖尿病の患者さんの多くは、年齢から考えると格段に頭もしっかりしていて、受け答えもはっきりしているという印象でした。  浴風会病院では毎年100例ほどの解剖をしていたのですが、先輩の医師が亡くなられた方の脳を検査し、糖尿病の患者さんとそうでない患者さんの脳を比較したことがあります。  すると、糖尿病でない患者さんは、糖尿病患者の三倍もアルツハイマー型認知症を患う人が多いとの結果が出ました。  実はそれ以前に糖尿病の人とそうでない人の生存曲線を比較した研究があるのですが、それでは差がありませんでした。それをもとに浴風会では、糖尿病の積極的な治療を行わなかったことの結果です。

知っておきたい「糖分が足りないことの害」

60歳からはやりたい放題[実践編] 福岡県の久山町ではほぼ全住民を対象とし、亡くなった方を解剖した調査結果があるのですが、それによると生前糖尿病だった人は、そうでなかった人の2.2倍がアルツハイマー型認知症と診断されたのです。  これによって、糖尿病はアルツハイマー型認知症のリスクファクターだと医師も考えるようになったのです。  ただ、調べてみると久山町では糖尿病の人は全例治療を受けていました。浴風会ではほとんど治療を受けていません。  糖尿病がある人が治療を受けると、受けていない人の2.2倍もアルツハイマー型認知症になるのに、治療を受けないでいると逆に3分の1しか認知症にならないのです。  このため私は低血糖の怖さを考えるようになったのです。  60代以降は食もどんどん細くなるため、「糖分が多過ぎること」より「糖分が足りないこと」を心配するべきでしょう。  食べないことで体に起こるデメリットや自身の幸福度を考えれば、きちんと糖分を摂ったほうが60代以降の人生は健康で楽しいものになるはずです。
次のページ
意外な○○の健康が、人生の質を大きく左右する
1
2
3
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。 東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、 現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。 高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。 ベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)など著書多数。

記事一覧へ
60歳からはやりたい放題[実践編]

前向きで毎日が楽しくなる60の具体策

おすすめ記事