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60歳以降は「好きな食事を好きなように食べるほうが健康」の理由

 老後の健康が気になり始める60代。これまでの食生活をガラリと変えて、甘いものを控えたり、減塩食を始める方もいます。  しかし、「60代以降の方は好きな食事を好きなように食べるほうが健康に良い」と高齢者専門の精神科医・和田秀樹さんは言います。<『60歳からはやりたい放題』より一部抜粋> ワインで乾杯するシニア夫婦

塩分不足は命を左右する

「塩分は血圧が上がるため、高齢になると控える」という人も多いのですが、医師としては2つの点から疑問があります。  まず、血圧の高さが健康や寿命に関与しているかというと、まだわからない点がたくさんあるのです。少なくとも、年齢を重ねたら少し血圧が高いほうが、頭もはっきりすることは事実です。血圧が200を超えていたらさすがに高いとは思いますが、いわゆる160~170前後の高血圧であれば、正直そんなに気にしなくていいと考えます。  もう一つ、ナトリウムは体にとってなくてはならない物質です。  歳を重ねると腎臓のナトリウム貯留能(体にナトリウムをキープしておく力)が落ちます。若い頃であれば塩分を摂らない生活をしていても、腎臓からその代わりにナトリウムを排出しないようにできていたのですが、高齢になると塩分を摂っていなくてもナトリウムを排出してしまうため、低ナトリウム血症を引き起こしやすいのです。塩分の不足で起こる低ナトリウム血症は、重篤な場合は死んでしまい、軽度であっても意識障害の原因になります。高齢で車を運転する人などにとっては、塩分不足は命を左右する危険な問題です。

血糖値が高くないことの弊害

 加齢により、若い頃よりも糖分や塩分を欲する人が多いように感じています。その要因は、動脈硬化に原因があると私は考えています。  さらに、動脈硬化が進む割合が高まり、血管内には脂質などがたまって、壁が厚くなり通り道が狭くなってしまいます。この場合、血圧が少し高めでないと、血液を通じて酸素が脳に運ばれません。同様に、血糖値が多少高くないと、低血糖になり、脳まで糖分がいきわたらないことも起こりえます。  血圧や血糖値が高いほうが、体がよく機能するので、以前よりも甘いものや塩辛を好むようになるのです。塩分と糖分に関しては、節制しすぎると体に悪影響を与えます。ですので、少しばかり多く摂っても気にする必要はないのです。
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「食べたいもの」は「体が欲しているもの」
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1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。 東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、 現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。 高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。 ベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)など著書多数。

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