更新日:2023年09月15日 17:53
スポーツ

ラグビーW杯が開幕…「優勝」を目指す日本代表は初戦という“鬼門”にどう挑むのか

「首脳陣のしたいこと」を選手が信じ切る日本代表

 トニー・ブラウンアシスタントコーチの攻撃戦術は、大勝負になるほど多彩さを示す。長谷川慎アシスタントコーチの教えるスクラムの型は、ジェイミー・ジョセフの言葉を借りれば「強い相手にレジスト(抵抗)できる」。全体的に小さな身体を寄せ合い、かがめ、相手より低い位置から機を見て押し返す。  かような首脳陣のしたいことを、選手が信じ切ろうとする。それが、いまの日本代表の特徴だ。  姫野が「優勝」と宣言した直後、32歳で副将の流大はこう決意を明かしていた。 「いま聞いた皆さんは、現実的ではないと思っていると感じます。ただ、僕らはできると信じています。2019年も、僕らがアイルランド代表に勝てるなんて、全勝でベスト8に行くなんて誰も想像できなかったはずです。その準備ができています。見ていてください」  大目標を掲げてもなお、まずは目の前の戦いに集中する。まずは、5チーム中2つだけが決勝トーナメントに進める予選プールを見据える。

大金星を挙げた南アフリカ代表との試合では…

 過去の実績を踏まえ、第三者は2戦目のイングランド代表戦、4戦目のアルゼンチン代表戦を注目カードと目するかもしれない。しかし現場はいま、本当の意味での目の前の戦いのみと向き合っていよう。  ワールドカップでは、そのチームにとっての初戦が鬼門となるからだ。  振り返れば、イングランド大会で過去2回の優勝を誇る南アフリカ代表は、日本代表との初戦で復調を目指す選手や若手を軸にメンバーを構成した。出場した南アフリカ代表側の1人によれば、目指すプレーの方向性も煮詰めてはいかなかったようだ。当日は、時々一発でトライを取り切りながらも、エラーを重ねた。  結局、スコアは32―34。勝った日本代表は一枚岩の防御、大会前3年間であまり披露していなかったキック中心の戦いを機能させた。加えて日本は、担当レフリーを直前期のキャンプ地に呼ぶほど、念入りに準備していた。  下馬評で上回るチームも、当日までの過ごし方次第で足元をすくわれ得る。その怖さを、日本代表はワールドカップ初戦で知った。この歴史的背景を踏まえれば、初出場国の実力を過小評価するのは避けるはずだ。
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初戦という“鬼門”にどう立ち向かうか
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1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年にラグビーライターとなり「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」「REAL SPORTS」「THE DIGEST」「Yahoo! ニュース」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。ワールドカップ期間中は現地情報をオンラインで届ける「ラグビー反省会特別編」を実施。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など
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