エンタメ

「マンションの壁が血で染まった」家庭内暴力を受けたアイドルが“傍観する母親”に感じた絶望感

壮絶な家庭環境を生き抜いたからこそ…

えんじてゃ氏

苦境に立たされている人に、「希望を与えられる存在」を目指す

 とはいえ、壮絶な家庭環境を生き抜いたえんじてゃ氏の嗅覚は、アイドル業界のほころびを捉えてもいる。 「収益構造がアイドル個人の努力にあまりに依拠しすぎていたり、自己実現の名のもとにやりがいが搾取されている点など、気になる点は多々あるので、仲間と一緒に改善していけたらと思っています。一部の誰かだけが血を流して、他の人が得をする構造を見過ごせないのは、もしかすると家庭環境が関係しているのかもしれません。  セルフプロデュースは、アイドル業界のなかでも厳しい環境です。もがきながらも“最良”を目指して活動する『アイドル失格』のライブによって、いま苦境に立たされている人に希望を与えられる存在になるのが目標です。  だからこそ、自身の体験をありのまま発信して、似通った体験をした人たちの琴線に届くような作品を紡ぎ出そうと思っています」  そう語るえんじてゃ氏の眼差しは、より遠くの未来を手繰り寄せているようでもあった。踏み躙られてきた過去を隠匿も忘却もせずに、ひたすら放流すること。自己開示を一切厭わない膨大な勇気によって、彼女の言葉は一層の熱を帯びて聞く者に染み渡る。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
1
2
3
4
5
おすすめ記事
ハッシュタグ