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“家庭を持ちたくない”男性が見た父の背中…「借金1000万円を抱えて姿を消した」

「毒親育ちの自覚はないんですけどね」  開口一番、男性はそう言った。会社員として勤務する30代の鈴木氏だ。現在は母親と二人暮らしをしている。 「小学生時代から、私と兄が寝たころを見計らって両親の夫婦喧嘩が始まりました。寝たふりをしても、母親の怒鳴り声とか泣き声が聞こえて気になってしまうんですよね。私が中学校2年生くらいのころにはもう、父親は月に1〜2回程度しか自宅に帰ってきませんでした。父親の不在が我が家の平常でしたね
鈴木氏

鈴木氏

消費者金融からの督促電話で母がノイローゼに

 もともと暗雲の立ち込めていた家庭がさらなる急落を見せたのは、中学3年生になってからだ。父親がした借金の催促の電話が鳴り止まない日々が続いた。 「本当に夜中3時とか4時になっても消費者金融からの督促は止まらず、母親はノイローゼになってしまいました。一度、過呼吸になって『本当に死ぬんじゃないか』と思うほど発作が続いたときは救急車を呼びました。そんな状況のなかでも、母親は『印鑑と通帳はあそこにあるから、あなたが管理してほしい。お父さんには渡さないように』と息も絶え絶え言っていましたね。  あとから聞いた話ですが、母親は電話で『おたくの息子さん、◯◯中学校に通われているそうですね』と脅迫とも取れる言葉を浴びせられていたようです」

無言で20分くらいドアを叩かれた…

悩む小学生

画像はイメージです ©buritora

 父親の困窮具合は、たとえば次のエピソードに象徴される。 「あるとき、珍しく家にいた父から『お金貸してくれない?』と言われました。状況がわかっていましたし、拒否できませんでしたね。貯めていたお年玉など諸々、すべて持っていかれました。母から聞いた話では、学資保険も勝手に解約されて使い込まれていたようです。また、ご近所さんにも『1000円でいいから貸してください』などとお願いに回っていたようです」  だが、父親がどれほど金策に走っても、闇金で作った負債をみれば焼け石に水。督促の手が緩むことはない。鈴木氏は一度だけ、ドアを隔てて業者と対峙した経験があるという。 「その日は留守番をしていて、インターホンが鳴りました。内心驚きましたが、無言を貫くと、さらに連続でインターホンを押してきます。少しするとそれはドアを直接叩く音に代わり、ドアの向こうでドンドンと拳を打ち付ける音がしばらく続きました。何か言うわけでもなく、無言で20分くらいドアを叩かれたのです
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“避難先”の図書館で勉強に没頭
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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