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「日高屋と幸楽苑」になくて、リンガーハットにあったもの…“業界2位”に登りつめたちゃんぽん屋の戦略

日本中まんべんなく出店しているからこそ…

冒頭で記したようにリンガーハットは、「ラーメン業界で2位」の規模を誇ります。2023年7月における各チェーンの国内店舗数は次の通りです。 1位:餃子の王将:731店 2位:リンガーハット:567店 3位:日高屋:408店 4位:幸楽苑:385店 5位:大阪王将:341店 各チェーンの特徴を見ていきましょう。トップの餃子の王将と大阪王将はライバルとはいえ“王将”のネームブランドにより、両者とも全国的に展開しています。一方、日高屋や幸楽苑もそこそこの規模ですが、実は全国的な知名度は高くありません。 日高屋は都内の駅前を主力としているため関東以外での知名度が低く、幸楽苑は東北や北関東のロードサイド店を主力とするため都市部ではあまり知られていないようです。 日高屋は会社員をターゲットとした「ちょい飲み」戦略を得意としているため、ロードサイドには積極的に進出できませんでした。幸楽苑は低価格戦略で全国展開を目指しましたが、人件費や原材料費が高まる中でコストが圧迫しドミナント戦略で地盤を固めた東北・北関東以外への進出を諦めました。全国に名の知れたラーメンチェーンは意外にも少ないのです。 ただ、リンガーハットは中国・四国・九州に約170店舗、関西・中京に103店舗、関東・東海に271店舗と全国的に進出しており、認知度の高低差は他チェーンほど大きくはありません。つまり同チェーンは規模が大きく、全国的に進出できた数少ないラーメンチェーンの一つといえます。

「ちゃんぽん」だからこその優位性

リンガーハットはなぜ全国的に出店できたのでしょうか。創業からいち早く九州以外への出店を試みたことも一因ですが、第一の理由として「長崎ちゃんぽん」自体による差別化があげられます。 醤油や塩など種類をあげるとキリがありませんが、ラーメンはいずれもやや「油っぽい・重い」という印象があり、料理の中では比較的味の濃いものとして位置づけられます。一方でちゃんぽんは、さっぱりとしていて比較的軽い印象があります。 ラーメンとは別の食べ物のような感覚があり、そもそもラーメンとちゃんぽんでは食べるモチベーションが異なるのです。「A店の塩ラーメン」と「B店の醤油ラーメン」で迷うことはあっても、ちゃんぽんを食べたい人がラーメンと迷うことは少ないと思われます。もう一つの看板メニューである「長崎皿うどん」も他のチェーンではあまりみられない料理です。 また、リンガーハットは2009年から使用する全ての野菜を国産化したほか、「野菜たっぷりちゃんぽん」の提供を開始しました。こうした施策が「ちゃんぽん=健康的な料理」というイメージにつながり、ラーメンとの差別化をさらに強化したと考えられます。
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他社が「リンガーハットの真似」をするのは難しい
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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