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「日高屋と幸楽苑」になくて、リンガーハットにあったもの…“業界2位”に登りつめたちゃんぽん屋の戦略

他社が「リンガーハットの真似」をするのは難しい

競合も現れてきそうですが、リンガーハットはコストを下げることで他社の参入を阻止してきました。特に注力したのは調理場の自動化です。 子会社である「リンガーハット開発株式会社」が店舗で使う調理機器の開発を担っており、回転しながら野菜を炒める「IHロータリー炒め機」や一定時間たつと鍋を横にスライドさせる「IH自動鍋送り機」を導入。特にIH自動鍋送り機は加熱時間管理の自動化やちゃんぽんの品質安定化に貢献しているようです。 こうした調理場の自動化は省人化によってコスト削減を可能にし、しいては競合の参入防止にも寄与しました。他社がちゃんぽん事業で利益をあげようとしても、資金を投じリンガーハットのように調理機器を開発しなければなりません。

業績回復は道半ば。今後の施策は?

差別化と参入の阻止により全国展開したリンガーハットですが、近年の業績は芳しくないようです。2020/3期から2023/3期までの業績は次の通りとなっています。 【株式会社リンガーハット(2020/3期~2023/3期)】 売上高:473億円→340億円→339億円→377億円 営業利益:15.5億円→▲54.0億円→▲14.6億円→▲2.9億円 店舗の6割程度をSC(ショッピングセンター)などのフードコートに置いているため、コロナ禍では商業施設の休業や時短営業、消費者の外出自粛により大打撃を受けました。とはいえ、2022年度は外食産業が回復しコロナ禍以前の売上高を超えるチェーンも現れているなか、リンガーハットの業績回復は道半ばとなっています。実は同社、既存店売上高が前年度を下回るなどコロナ禍以前から不調が続いていました。コロナ禍で客離れが加速し、経済活動が正常化した後も戻ってこないことが数字として現れた形です。 今後の集客施策として同社はZ世代をターゲットとした企画を打ち出しています。しかし女性客から一定の支持を受けているほか、外販している冷凍食品が40~60代の層から支持を受けていることを考えると、リンガーハットはやはり若者ではなく健康面を気にしている層をターゲットにした方が良いかもしれません。今後、客足回復につながる施策を打ち出せるのか見届けたいものです。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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