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皇室が必要な理由を簡単に答えられる日本人は少ない/倉山満

古代史の結論は「よくわからない」

まず、天地開闢(この世が誕生した時)の神様の名前が、『古事記』と『日本書紀』で違う。『日本書紀』は正史なのに、「一書に曰く」と異説を並べる。しかも大事な部分に限って異説が多い。結論は「よくわからない」で、「こんな風に伝わってきた」と正直に書いている。 やがて神様が男女に分かれ、多くの神様と日本列島が誕生する。 ある時、神様の一人のニニギノミコトが「地上に行け」と命じられて、手下を連れて下っていく。天孫降臨だ。この天孫降臨を命じた神様も違うのだ。現在の通説はアマテラスが命じたと固まっているが、『日本書紀』では異説だらけだ。異説の一つとして、アマテラスが命じたとする『古事記』をあげる。このアマテラスが、いつ、なぜ、皇神となったかも、歴史学の対象だ。 古代史は「わからない」と向き合う学問なのだ。

日本は世界最長不倒の皇室

皇室 代数と世数

今上陛下と文仁親王、どちらも第七十三世。今上陛下の後、文仁親王が継がれるのか、悠仁親王が継がれるかわからないが、悠仁殿下は、神武天皇の第七十四世なのだ 図版/ミューズグラフィック

ニニギノミコトは、日向国(今の宮崎県)に降り立った。ニニギノミコトの曾孫が神武天皇である。「神武天皇」は奈良時代につけられた名前で、当時は「はつくにしらすすめらみこと」と呼ばれたと伝わる。意味は「初めて国を治めた天皇」だ。 神武天皇は日向から東征を行い、大和国(今の奈良県)に都を立て、初代天皇として即位した。西暦では紀元前660年の建国と計算される。我が国が公称2683年の歴史を誇る根拠である。 神武天皇の息子の息子の……第七十二世の子孫が上皇陛下、第七十三世が天皇陛下と秋篠宮殿下、第七十四世が悠仁殿下である。皇統は、一度も途切れることなく、神武天皇の男系子孫に受け継がれた。世界最長不倒である。 例外的に八方十代の女帝(男系女子)がおられるが、やがて男系男子に皇位は移り、今に至る。 これが万世一系である。「歴史が長く一度も途切れることなく続いている」は、文化的価値であり、外交上の武器である。国際社会では歴史が古い方が問答無用で偉い。
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女系で男系を補完し受け継いできた血統
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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