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皇室が必要な理由を簡単に答えられる日本人は少ない/倉山満

万世一系に向けられる疑いの目

だからこそ、万世一系に疑いの目を向け、抹消したがる人もいる。よく疑われる部分を上げておこう。 第二代綏靖天皇から第九代開化天皇は事績がほとんど伝わらないので、欠史八代と呼ばれ、神武天皇とともに実在が疑われる。その割に残る歴史は本当の話でないなら、「なぜ、こんな話を残した?」のエピソードだらけなのだ。だいたい、綏靖天皇からして「兄殺し」で始まる。 第十代崇神天皇は「はつくにしらすすめらみこと」と呼ばれた、と伝わる。神武天皇と同じ名前だ。だから、本当の初代天皇は崇神天皇で、それ以前の天皇は創作にすぎないとの主張もある。類推にすぎないが。 第二十五代武烈天皇から第二十六代継体天皇の時に、王朝交代が起きたとの説も根強い。ほぼ言いがかりだが。

女系で男系を補完し受け継いできた血統

記紀に共通するところによれば、武烈天皇が子どもを残さずに崩御すると、群臣たちは皇族を探し回った。ようやく第十五代応神天皇の来孫(孫のひ孫)を見つけ出し、即位してもらった。継体天皇である。 この時点で、女性皇族は存在する。女帝の先例もある(最初の女帝は推古天皇ではない)。しかし、女帝を立ててもいずれは男子が継がねば男系継承にはならない。だから皇族を探し回った。男系男子であり、神武天皇二十世の子孫を見つけ出した。 ただし、血が遠い。そこで継体天皇は、第二十五代武烈天皇の妹で第二十四代仁賢天皇の娘の手白香皇女を皇后に迎えた。二人の子の第二十九代欽明天皇の子孫が、今の皇室である。女系で男系を補完した。 この継体天皇が、皇室と何の縁もゆかりもない他人で、それまでの皇室を簒奪したのではないかと疑いを向ける人もいる(王朝交代説)。何の根拠もない言いがかりだが、百歩譲って継体天皇が皇室と関係のない赤の他人でも、神武天皇から仁賢天皇まで受け継がれた血統は今の皇室に伝わっている。 万世一系を語ると「本当につながっているのか」と疑う人は後を絶たないが、先人たちが疑われない努力をしてきたのは、歴史的事実だ。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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