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「磯丸水産を買収した企業」が勢力を拡大し続ける理由。投資信託のような“分散力”が強みに

化学メーカーで研究開発を行う傍ら、経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。 『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングス(以下、クリエイト)の業績について紹介したいと思います。 ゼンショーと言えば「すき家」、コロワイドと言えば「牛角」のように、飲食大手は社名を聞くだけで代表的なブランドを思い浮かべる事ができます。一方、クリエイトも飲食大手ですが、運営店舗を言い当てるのは難しいでしょう。実は、「つけめんTETSU」や「デザート王国」など、聞けば「あっ!」と気が付くような店舗を展開しています。25のコアブランドを展開し、投資信託のような分散力を強みとして成長してきたのです。同社の沿革と今後の戦略について見ていきたいと思います。
磯丸水産

©beeboys

設立は1997年。2019年に全社1000店舗を突破

同社は1997年に設立し、99年に洋食店5店の譲渡を受ける形でレストラン事業に参入しました。2000年にフードコート事業を開始し、2003年には中価格帯の寿司チェーン「雛鮨」の営業譲渡を受けます。様々な業態の店舗を運営しながら2004年に全社100店舗体制となり、その2年後には300店舗を達成しました。 M&Aにも積極的で、2012年にはイタリアン「TANTO TANTO」を展開するルモンデグルメを、2013年には「磯丸水産」で知られるSFPダイニングを子会社化しました。同年に全社500店舗体制となり、東証1部への市場変更を果たしました。そして2019年に全社1000店舗を突破し、昨年はベーカリー「サンジェルマン」を買収しました。M&Aによってブランド数を増やしながら成長してきたことが分かりますね。

投資信託のような「マルチブランド・マルチロケーション戦略」

現在では25種の店舗を「コアブランド」として位置づけ、様々な業種や立地の店舗を展開しています。一つの業態に依存しないのが特徴で、傘下には以下のようなチェーンを置いています。 和食系:しゃぶ菜、かごの屋、いっちょうなど 洋食系:TANTO TANTO、AWKitchen 居酒屋業態:磯丸水産、鳥良商店など カフェ・スイーツ業態:デザート王国、MACCHA HOUSE、あずさ珈琲など また、立地別に見ても都市SC店26%、郊外SC店24%、駅前・繁華街21%、ロードサイド14%とある程度は分散されています。様々なブランド・立地で店舗を構えるのは、同社が「マルチブランド・マルチロケーション戦略」を掲げながら出店を続けてきたためです。 同戦略はその名の通り様々な立地やブランドを手がけるという戦略であり、立地や施設の特徴によって適切なブランドを出店するという戦略です。一つに資本を集中投下せず分散投資する体制は、まるで投資信託のようなポートフォリオと言えます。 リスクを分散し続けてきたからこそ、一ブランドの客離れに影響されず成長を続けてきたのでしょう。ちなみに、この戦略には自社のノウハウを活用し、出店先である商業施設に対して業態を提案できるという強みもあるようです。
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ブランドが分散されていても…
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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