サブウェイが人件費3割増でも“フルタイミー化”を進める理由。飲食店店長は「シフト作成が嫌い」だからこそ“大きなメリット”が
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
外食大手のワタミがスキマバイトサービスのタイミーとタッグを組み、サンドイッチチェーンのサブウェイをスキマバイトが担う“フルタイミー化”すると4月10日に発表しました。
飲食店最大の課題である人材不足解消の画期的な一手。この提携内容をつぶさに観察すると、双方の思惑が色濃く浮かび上がってきます。
今回のニュースに、SNSではサービス力低下を懸念する声もありますが、フルタイミー化の対象となっているのは、ワタミ直営の「サブウェイ ヨコハマベイサイド本店」であり、サブウェイの大部分はフランチャイズ加盟店。従って、直営店以外にこの仕組みが波及するのはまだまだ先になるでしょう。今回はモデル店舗としての位置づけが強いものです。
ただし、ワタミは2025年度に直営店とフランチャイズを合わせて35店舗、2035年度までには1065店舗に拡大する計画を立てています。2025年度は13店舗でスキマバイト運営を行う予定。ワタミは直営店での拡大力に優れており、運営が軌道に乗ればフルタイミー型の店舗は中期的に広がる可能性が高いと言えます。
フルタイミー化というと、スキマバイトを複雑に組み合わせて店舗運営を行うイメージが先行してしまいますが、オペレーション負荷の高い業務を切り分けたというのが実情。
今回の提携のポイントは、接客や調理などの技術習得を4時間程度かけて研修店舗で実施することであり、マニュアル作成などはタイミーが行います。そして店舗運営に必要な人材もタイミーが手配をするのです。
ワタミの渡辺美樹会長兼社長は、タイミーを使った場合の人件費は手数料が上乗せされるために3割程度増えるとコメントしています。一方、採用と研修に必要なコストを鑑みると、全体では効率的な運営できるというのです。
つまり、今回の提携は人材獲得と研修、必要な人員のシフト作成をタイミーに外注するのと同義だということになります。
飲食店のアルバイト長や店長経験のある人は、スタッフの突然の離職や、予期しないシフト変更依頼で四苦八苦したことがあるかもしれません。外注してスムーズに回るのであれば、これほど楽なことはないのです。

yu_photo – stock.adobe.com
スキマバイトだけで店舗運営は可能?
外注してスムーズに回るのであれば…
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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