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「国立医学部以外はクズ」と詰め寄る、医師になることを強要…“教育虐待”を行う親の正体

「生徒同士が友人になること」を禁止する理由

 同塾の特徴は、徹底して生徒の側に立つスタンスだ。多くの場合、予備校の費用などを支払うのは保護者だが、高梨氏は忖度しない。 「保護者のなかには、『うちの子が何か言っていませんか』という“探り”を入れてくる方もいらっしゃいますが、生徒から聞いた悩みは絶対に保護者を含む他者に伝えません。生徒からみれば、『実は塾と親が裏で繋がっていた』というのが最悪の展開です。そうなれば、誰が悩みなど打ち明けるでしょうか。  また、同じ理由で、当塾は生徒同士が友人関係を築くのも禁止です。友人になってしまうと、成績から何からいろいろ踏み込まれて、結果的に本人たちを煩わせるのが目に見えているからです。講師などとの関係のみに一本化することで、雑音を排除し、良い精神状態を保って受験に臨んでもらいたいと考えています」

親が「8時間怒鳴り続ける」家庭

   高梨氏が勉強面の悩みよりもむしろ深刻だとする「家庭内での悩み」とは、具体的にどのようなものか。 「エピソードは家庭によってさまざまです。模試の結果が悪くて8時間怒鳴られ続けたとか、小学校のころにゲーム機を窓の外に投げて壊されたとか、出来の良くない友だちと比較して『あんなどうしようもない人生送りたいのか』と言われたとか、本当に事欠きません。  ただ、いくつかのパターンはあります。親が優秀で、同じ成果を子どもに強要するパターンは典型的です。たとえば『国立医学部以外はクズだ』と詰め寄り、プレッシャーを与え続ける保護者は多いです。このタイプは、厳しいことを言えば子どもが奮起するのだと誤認しています。しかし実際、そんなことはありません。  好対照ながら『自分に学歴がないから子どもには医師になってほしい』というパターンもまた典型的です。このタイプは、『これが子どものためになる』といわれている根拠の薄い情報に踊らされやすく、学習の緩急を理解していないので全て詰め込みたがります。たとえば『医学部へ行くなら皆勤じゃないとダメ』などの意味不明な情報を信じて、体調不良の子どもを無理に学校へ行かせる保護者も知っています」
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「子どものため」のはずが空回りする親たち
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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