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「国立医学部以外はクズ」と詰め寄る、医師になることを強要…“教育虐待”を行う親の正体

「子どものため」のはずが空回りする親たち

 高梨氏は、保護者側のリテラシーについて特に強い警鐘を鳴らす。 「害悪になる保護者について語ってきましたが、私は、はじめから害悪になろうとした人はいないのではないかと思っています。むしろ『子どものため』という出発点に嘘はないものの、方法が間違っているのだと思います。  親が『子どもが将来困らないように医師にしてあげたい』と思ったとしましょう。逆算して『中学受験がいい』という情報を得るとします。しかし遡れば遡るほど、どのライフステージにも、情報はあるものです。曰く、『◯歳でクロールを泳げないとダメ』『逆上がりは◯歳までに体得しないとダメ』『自転車は◯歳までに乗れないとおかしい』『◯歳までに二語文が言えないとダメ』『◯歳までに卒乳しないとダメ』――まるで洪水状態です。  そうなると、生真面目な保護者ほど窮屈になってしまいます。そのしわ寄せが全部子どもにいくのです。よく保護者から『ちゃんとしている人じゃないと医学部にはいけないですよね』と言われますが、医学部に行く人の性格は当然ながら千差万別です。保護者が『〜すべき』思考から脱却することが、第一歩だと思います

行き過ぎた親は迷惑ファンみたいなもの

 エースアカデミーでは、定期的に自分を褒める講座を開催している。その真意はこうだ。 「先ほどの保護者の思考が凝り固まっていくことと類似するのですが、生徒も自分を褒める経験がないと、どんどん『これができない自分はダメ』と思い込みを深くしがちです。それは、自分のなかの基準値だけが上がっていき、将来自分を苦しめてしまいます。そうではなく、『結果の良くない模試だったけどこんな成長があった』という良い気づきを自分に向けてあげてほしいと思います」  根深い親子の問題について、生徒の側には具体的にどのようにアドバイスをするのか。 「塾生が抱える悩みは、似た系統のものはあっても、個々が異なっているので一概には言えませんが、私はよく『行き過ぎた親は迷惑ファンみたいなもの』だと教えています。推し活全盛のいま、どんなに愛されているアイドルにも一定数の迷惑なファンはいますよね。しかし彼らに愛情がないかといえばそうではない。医学部受験をさせる親も同じです。そう思えば、少し親のことも引いてみることができると思うんです。そうなると、『あぁ、次は親はこんな行動するだろうな』とかが読めてきて、親の機嫌や言動に揺らがなくなるのではないかと私は考えます
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難関受験において必要なことは…
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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