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サウナでタオルを扇ぐ“熱波師”は職業たり得るのか? 人気熱波師「サウナという空間を邪魔しない」

他の業界に負けない温浴の力を社会にアピールしたい

 林店長は「日本サウナ熱波アウフグース協会」代表として、サウナの基礎知識から熱波師の実技を学ぶ「熱波師検定」を実施したり、熱波師がさまざまな競技で争う大会「熱波甲子園」を開催したりしている。また、温浴施設スタッフによるアイドルグループ「OFR48」をつくるなど、その活動は多岐にわたる。それらはすべて「人と人を繫ぐため」である。 「小さい業界だけれど、他の業界に負けない温浴の力を社会にアピールしたい。温浴施設のスタッフたちがいかに面白いかということをこれからも伝えていきたいと思ってます」  林店長の手腕で多くの客が足を運ぶようになった「おふろの国」だが、同施設の代名詞でもあった熱波師・井上勝正氏の独立についてはどう思っているのか。 「まあ、いつかは離れると思ってましたよ。他の温浴施設から呼ばれて熱波をする単発仕事がけっこうあって、『おふろの国』にはあまりいなかったですから。井上さん、人気があるんですよ。長いあいだ一緒にやってきたので、“寂しくない”と言ったら噓になりますが、応援しようと思ってます。だって僕は、現役時代のあのギラついた井上勝正のファンですから」

昨今の熱波師たちを見ていて思うこと

「おふろの国」店長・林和俊氏(右)と井上氏は、元熱波師が花板として腕を振るう銀座の寿司店へ

 井上氏は独立後も月に2回、「おふろの国」で熱波サービスを行っている。これもまた二人の“繋がり”があってこそ実現した、ちょっとした奇跡のようなものである。林氏に昨今の熱波師たちを見ていて思うことがないか聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。 「フリー熱波師は淘汰されていく。温浴施設のことを知らない人が多いから。お店からしたら、“あなたは集客できるんですか?”“お店のために何ができるんですか?”“今はまだまだだとしても未来を魅せてくれるようなアクセントになるんですか?”ってことです。一方、井上さんは強烈な個性がある。隙あらば自分を押していく図々しさがある。そして何より、“金の雨を降らせる”のが井上勝正です。誰もが彼になれるとは思わないし目指さなくてもいい。でも見習うべきところはたくさんあると思いますよ」  熱波師がいつか「子供が将来なりたい職業ランキング」に入る日は来るのだろうか。わからない。でも、井上氏が走り続ける限り、可能性はあるのだと思う。井上氏は笑いながら、真剣に言う。 「サウナの黄金体験しようぜ!」

「サウナに期待するな」

取材・文/追っかけ漏れ太郎 撮影/林 紘輝
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