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東急、東武、小田急、西武…“私鉄四社”で分かれた明暗。「運賃の値上げ額」が分岐点に

14%程度の値上げ効果が奏功した?

 定期の利用者数が減少しているのは、東急も西武も同じ。東急の方がむしろ減少幅が大きく、打撃を受けています。これは渋谷にIT企業が集積しているために、リモートワークを導入しやすい企業が多いことが関係しているでしょう。街の特性として鉄道の利用者数が戻りにくいのです。  東急は2023年3月18日に鉄道料金の改定を行いました。渋谷から武蔵小杉はICカードの利用で199円から227円に、横浜までは272円から309円となりました。この区間で14%程度上がったことになります。  その一方で、西武や東武などは一律普通運賃10円の値上げに留めました。これは「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用したもので、ホームドアの設置や段差の解消などを目的として広く利用者から負担してもらう仕組みです。  素早く値上げへと動いた東急は、リモートワークの影響を受けながらもそれを巧みに回避したのです。

「ハリー・ポッターの体験型施設」が追い風になるか

 レジャーでの西武線利用に目を転じると、西武線は追い風が吹いています。2023年6月16日にとしまえん跡地にハリー・ポッターの体験型施設「スタジオツアー東京」がオープンしました。  アジア初の施設で心待ちにしていたファンも多く、3月に販売した9月末までのチケットは購入待ちの人数が一時13万人を超えたと報じられています。  西武園ゆうえんちは、USJの再建に尽力した森岡毅氏を迎えてリニューアルを実施。昭和レトロな街並みを再現するなど人気化し、2023年に総来場者数が4000万を突破しました。  西武は特急料金の改定などを行い、収益力向上に努めます。特急はレジャーで利用する乗客も多く、収益力の回復には期待ができます。
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「賃貸住宅事業で遅れが生じている」東武
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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