「勝負の神様は細部に宿る」からこそ大事にすべきこと
岡田さんは「
勝負の神様は細部に宿る」という言葉を大事にしている。
勝敗や結果を左右するのは「小さなこと」であっても、気を緩ませずに必死になって取り組むこと。この姿勢が、勝負どころで運をたぐり寄せ、最後には神様からご褒美を与えてもらえるというものだ。
日本代表監督を2度も歴任してきたからこそ、重みのある“勝負哲学”だと言えるのではないだろうか。
さらに、AIが急速に発展することで、AIに翻弄され、「何が本当か嘘なのかの見分けがつかなくなる」と懸念を抱く。
価値観や生き方が多様化し、未来が予測できない正解のない時代においては「
多様な人たちが感情を共有できるコミュニティを作ることが重要になる」と岡田さんは語る。
「今までの世の中は、数字で表せるもので評価されてきました。でも、
これからは目に見えない心の豊かさや信頼、共感といったものが大事になってくる。ロールモデルがない予測不能な社会で活躍するには、心身ともにタフでないといけないし、主体的に取り組む姿勢や変化に適応する力、周囲を巻き込んでいく力が求められると感じています」
2024年4月に開校するFC今治高校 里山校(FCI)の学園長に就任する岡田さんは、同校での教育を通して「ヒストリック・キャプテン」(主体性を持ち、仲間と共に困難を乗り越え、次の時代を切り拓くキャプテンシップを持ったリーダーのこと)の育成を目指すとのこと。
「学校は社会に出るための準備」
そう語る岡田さんは学校教育にかける思いを次のように話す。
「学校の授業で教える論理的思考や知識は最低限必要ですが、それはChatGPTの方が全然上をいくわけですよ。また、AIに翻弄されてしまい、何が本当か嘘なのかの見分けがつかなくなっている。そういう時代に、何をやらなければならないかと言えば、人間が生きるために本来持っている力を養うこと。
学生が実学・実践を重視した教育カリキュラムを履修することで、主体的に動き、考えて人生を生き抜く土台を育てていくことが、非常に求められています」
殻を破り、困難に立ち向かい、社会を変えていくには主体性が求められる。とはいえ、主体性を押し付けるような教育はしない。
主体性を伸ばす教育に力を入れるデンマークでは、子どもに主体性を求め過ぎるがゆえ、そのプレッシャーに耐えられずに、精神安定剤の薬を飲む子どもが少なくないという現状があるそうだ。
ここで肝になるのが「守破離」の考えである。いきなり「破」を子どもに押し付けても、どうすればいいかわからない。
FCIの実学・実践を重視した授業構成。学生に合わせた個別最適な学びや教科ごとの専任の先生を置くのではなく「全員担任制」を導入するとのこと
FCIでは、午前中に主要五教科の座学を行い、午後は学外でのフィールドワークや地域交流、野外体験といった授業を展開。さらに寮生活を送ることで、徐々に主体性を身に着けられるような仕組みを作っている。
FC今治高等学校 里山校
「地方には、都会にはない資産(アセット)や生きる知恵が残っています。それらを後世に知恵を継いでいく必要があり、JリーグやBリーグのクラブ全部が、FCIのような地域連携の取り組みをしていけば、世界が変わるかもしれない。これこそ、真の地方創生なのではと考えています。現代は、ちょっと圧力をかけただけでパワハラと言われてしまいますが、“自然が与えるプレッシャーはパワハラにならない”わけです。
FCIで行う野外活動では自然との共生を目的にしており、ときには困難や苦労を伴うかもしれない。でも、重いものを持たないと筋力がつかないように、こうした試練を味わなければ、人は成長していかないんですよ」
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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