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「兄が暴れて全裸で外に…」兄弟姉妹が重い障害を抱える“きょうだい児”の苦悩と葛藤

オンラインきょうだい児会の開設

(株)ジルベルト 事業所内にて

「立ち上げたきっかけは兵家連から、若い子は来ているか聞かれたことです」 こういった家族会連合会は、精神に障がいのある方の家族が結成した団体で全国にある。大阪なら大家連、京都なら京家連とそれぞれの都市に会がある。その中の1つが兵庫の兵家連だ。 「精神に障がいのある方の家族」といっても、知的障害者と精神障害者の家族では、その深刻度が異なるという。そして、「兄弟姉妹」といっても、20~70代など、世代によっても「しんどさ」に差がある。それなので、45歳以下の会を立ち上げた。 「僕のような知的障害のきょうだい児は、母が障害のある兄と共依存状態なので、早くグループホーム入所を検討してくれないかなど、緊急性が低いんです。だけど、精神障害者のきょうだい児は毎日がつらい」 統合失調症の兄を持つ20代の妹が「兄が暴れる。全裸で外に出てしまうので、措置入院と退院というサイクルを3ヵ月周期で繰り返している。今は入院していてホッとしているが、母からは“お兄ちゃんの今後をよろしく”と言われる。皆さんはいつきょうだい児であることを受け入れられたのか」という不安を打ち明けたことがあった。50代の女性は「私なんか受け入れられたのはここ数年よ」と答えた。それくらい長期に渡り、きょうだい児たちは葛藤し続けている

“産まれた時から選べなかったやん”というきょうだい児たちの声

「親は“子育てがどんなに大変か”というけれど、きょうだい児たちは“産まれた時から自分の境遇を選べなかったやん”と思うんです」 リアルなきょうだい児会は2か月置きに開催されていたが、若い世代がより気楽に愚痴や悩みを吐き出せるオンラインきょうだい児会には、様々なセンシティブな悩みが飛び交う。

オンラインきょうだい児会への書き込み

「オンラインとリアルな集まりでは、オンラインの方が深刻な悩みを打ち明ける人が多いです。兄弟姉妹を殺してしまいたいなど、過激な意見が出ることもあります」 最後に、福田氏がきょうだい児たちに伝えたいことを聞いた。 「自分一人で抱え込まないで欲しい。吐き出せる場所を持って欲しいです」 現在も日々、オープンチャットには悲痛な悩みが書き込まれ続けている。きょうだい児という存在が知られること、支援の手が増えることが急務だろう。 <取材・文/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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