更新日:2024年11月25日 16:07
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ユニクロ、しまむらに次ぐ「業界3位」の底力。“地盤沈下”しない2つの理由

主力4ブランドはなぜ高い認知度を得られたのか

アダストリアは2010年代に大きく成長しました。2011年2月期に売上高が1,000億円を超え、14年2月期には1,500億円を突破し16年2月期には2,000億円を超えました。トリニティアーツを買収したように、同社はM&Aや自社開発によって複数のブランドを展開するマルチブランド戦略を基本としており、これが武器の一つです。 例えば2010/2期と2020/2期におけるローリーズファームの売上高(国内)はそれぞれ251億円/237億円と減少していますが、この間に他ブランドは拡大しており、全社としては成長し続けました。少数のブランドに特化していれば早々と衰退していたかもしれません。2024年1月現在では30以上のブランドを展開しています。 また、ユニクロのように商品企画や生産、物流や小売まで自社で管理するSPA体制も強みとしています。同社は以前まで企画や生産を他社に外注していましたが、2010年代からは内製化を進め、著しく成長しました。 SPA体制のメリットは小売業を通じて得られる消費者のトレンドを商品企画に迅速に反映できる点にあり、主力4ブランドが高い認知度を得るようになったのも優れた商品開発力が背景にあると考えられます。ただし売上高に対して営業利益は伸び悩んでいるため、SPA本来の強みであるコストコントロール力は十分に発揮できていないようです。

2020年代から軟調の兆し。その理由は?

2010年代に著しい成長を遂げたとはいえ、その後は軟調の兆しが見え始めました。2018年2月期に売上高が2,200億円を超えてから横ばいとなり、コロナ禍が追い打ちをかけた形です。2019年2月期から23年2月期までの業績は次の通り推移しています。 【株式会社アダストリア(2019年2月期~2023年2月期)】 売上高:2,227億円→2,224億円→1,839億円→2,016億円→2,426億円 営業利益:71.9億円→128.9億円→7.7億円→65.6億円→115.2億円 国内外店舗数:1,427店→1,392店→1,400店→1,428店→1,509店 成長が止まった主な要因は主力とする国内店舗の売上が伸び悩んでしまったことにあります。国内のアパレル市場全体が既に頭打ちとなっているなか、アダストリアが展開する主力ブランドも駅前商業施設やイオンモールなど至るところで見かけるようになりました。 これ以上出店の余地が見込めず、成長が止まったと考えられます。ちなみに23年2月期はコロナ禍以前を上回っていますが、EC事業の好調のほか、株式会社ゼットン買収による飲食事業への参入(後述)が主な増収要因です。
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「飲食事業参入」は公園立地が狙い?
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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