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IHコンロvs電子レンジ、電気代がより安く済むのはどちら? 食材によっては6倍近い差も

電子レンジが優勢かと思いきや、短所も

中村剛氏

東京電力エナジーパートナーの中村剛氏

食材自体に含まれる水分の摩擦熱で加熱する電子レンジのほうが有利な結果になりそうだが、そんな電子レンジもその装置の仕組みの中で生じる熱のロスがあるというから少々ややこしい。 「電子レンジはマグネトロンという装置から電磁波を出し、水分を振動させてその摩擦熱によって食材を温める仕組みで、熱効率としては50〜60%ほどに留まります。対して、磁力線を鍋底に直接当てるIHの熱効率は約90%と非常に高効率。鍋の部分で熱を奪われてロスすると言いながらも、周りの空気中に放熱しにくいため非常に効率が良いんですね」

「一人前のパスタ」なら電子レンジを使うべきか

「ちなみにエネルギー庁の『省エネ性能カタログ』では、非常に高性能なビルトインガスコンロでも56%と紹介されています。ガスコンロの場合は鍋に熱を奪われるのは当然ですが、鍋底の径に合った火力にいくら調整してもどうしても周りの空気も温めてしまうため、空気中に放熱される熱のロスが大きいんです。その意味ではIHクッキングヒーターも決して非効率的というわけではなく、むしろ非常に高い熱効率で調理しやすい。そういう意味ではIHも安心して使ってもらいたいと思います」 仕組み上の熱効率の対決ならIHの一人勝ち。しかし、実際にパスタを調理する際の鍋の大きさや加熱する食材や水の容量といった諸条件を踏まえると、少なくとも一人前ぐらいのパスタなら、電子レンジで調理してしまったほうが電気代は安く済みそうだ。 「1996年から2011年まで『TEPCO銀座館』という我々のPR施設があって、そこで当時いろんな実験をしていたんですが、食材をIHで沸かしたお湯で茹でた場合と電子レンジで加熱した場合の比較データをとったことがあります。このときは野菜での実験でしたが、電子レンジで加熱したときのほうが調理時間は約2分の1に、電気代は6分の1になりました。この数字は条件によって変わるので、あくまでひとつの参考程度のものですが、電子レンジを上手に活用してあげると非常に効率的だし、節電につながりやすいと言えます」 この実験を行った2007年当時、試算条件となった電気料金の単価は約23円/kWh。お湯で茹でたときに6.1円だった電気代は、電子レンジで加熱したとき1.0円という結果になったそうだ。 現在、全国家庭電気製品公正取引協議会が電気料金の目安として示している約31円/kWhで計算すると、 1回の調理につき単純計算で7円弱の電気代の差が生まれることになる。
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1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii

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