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ユニクロ、しまむらの影響で苦戦する「アパレル業界4位」。“競争力を失った”納得の理由

“過度のブランド展開”が業績悪化を招く

前提があるとはいえ、ブランド数を増やしすぎたことが業績悪化の一因です。業界3位の株式会社アダストリアが展開する「グローバルワーク」、「ローリーズファーム」の認知度は高い一方、ワールドが展開するブランドの認知度は正直なところあまり高くありません。ブランド数を増やしすぎたせいで代表的なブランドを確立できず、集客力を強めることができなかったと考えられます。 また、もともと百貨店事業に力を入れていたためか小型店が多く、競合と比較して高コスト体質となっていたのも苦境を招いた原因です。ユニクロのように少ない人材で売場を回す大型店に対し、小型店メインの経営は人件費を圧迫します。アパレル大手の販管費率はおおむね40%台に収まりますが、ワールドでは現在でも50%を上回っています。 高コスト体質から脱却すべく2015年以降は年間数百人規模の退職とブランド数削減を継続し、2023年2月末時点でブランド数は約60まで減少しました。まだまだ多い印象ですが、それでもピーク時の100よりはかなりスリム化できています。

現在は売上が回復している

次に近年の業績を見ていきましょう。2020年3月期から2023年3月期までの業績は次の通りです。 【株式会社ワールド(2020年3月期~2023年3月期)】 売上収益:2,363億円→1,803億円→1,713億円→2,142億円 営業利益:123億円→▲216億円→22億円→117億円 最終利益:80億円→▲171億円→2億円→57億円 店舗数:2,462店→2,155店→2,361店→2,224店 2021年3月期はやはりコロナ禍で大打撃を受けましたが、翌年度はなんとか黒字に抑えました。従来より継続してきた不採算店の縮小とブランド数削減の効果が現れた形といえます。 翌22年3月期は店舗数が200以上増えていますが、これは子供服ブランドを展開するナルミヤ・インターナショナルを子会社化したためです。とはいえ不採算店の閉店も継続しており、同期中に531店舗が退店しました。そして2023年3月期は以前の水準には未達とはいえ、アフターコロナでの好景気(中間層)やリベンジ消費により売上が回復しました。
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今後は「脱・小売店事業」を目指す
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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