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木梨憲武が“幅広い層”から支持される理由。何をやっても光るセンスはドラマ『春になったら』でも健在

通を唸らせる楽曲を「木梨レコード」で製作

とんねるずとしての活動全盛期から、木梨の歌の上手さはピカ一だった。秋元康作詞の「雨の西麻布」は、その時代、業界の華やかさを象徴するナンバーだったし、1992年リリースの「ガラガラヘビがやってくる」は、初のオリコン1位ナンバー。矢島美容室としてのドリーミングなパフォーマンスも素晴らしかった。 2019年には「木梨レコード」を設立しソロデビュー。レコード会社の友人に聞くところでは、ミュージックビデオ制作からライブ演出まで、あらゆる音楽的要素をすべて自分でコントロールしているという。 なるほど、パラスポーツの応援ソングとして制作された「No Limit feat.AK-69」ではヒップホップ界のカリスマAK-69をフィーチャーするなど、共演アーティスト選びにもセンスを光らせる。セルフコントロールされたグランド・デザインが洒脱かつ、完璧に設計されている。特にR&Bラヴァーの耳を喜ばせる1stアルバム『木梨ファンク ザ・ベスト』のファンクグルーヴはたまらない。

「しがない中年男性役」でもしっくりくる

筆者は一度だけ、木梨司会の番組収録を見学したことがある。収録前、某局エレベーター前にいると、何ともタイミングよく木梨が降りてきた。ほんの一瞬の鉢合わせだったが、ほんとうに粋な雰囲気をまとっていた。 収録スタジオに入ってくるなり、ひとつやふたつの軽いジョークは忘れない。カメラが回っていないところでこそ、共演者やスタッフを和ませ、現場づくりとする(にしてもカメラマンはそのジョークによく笑っていた)。 大物でありながら、決して大物ぶらない。だからどんな年代にも支持される存在なんだろうけど、下町で育った木梨特有の飾らない、市井の感覚が今でも変わらずにずっと根付いているんじゃないか。 お笑いタレント、画家、歌手の他、俳優として画面上に登場するときの木梨こそ白眉ではないか。しがない中年男性役を演じるとしっくりくるなんてもんじゃない。そういう役柄を単に好むのか、それとも精神的に何かしらの共感があるのか。いずれしろ、木梨の平衡感覚は、おそらく演技のフィールドで一番発揮されると思う。
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『春になったら』の木梨憲武は“通常運転”
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コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションでR&B部門を立ち上げ、企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆。最近では解説番組出演の他、ドラマの脚本を書いている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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