エンタメ

“令和の山口百恵”が降臨する『不適切にもほどがある!』筆者が「絶対に売れる」と確信した出来事

“時代が追いついた”必然的なはまり役

そもそも河合に対して「絶対に売れる!」と意気込みたくなったのは、どこかレトロな雰囲気がとても魅力的だと感じたからだ。ここ数年のレトロブームにトレンドとして乗っかる若者的な身振りとしてではなく、もっとサブカル的な感性が鋭く、レトロそのものな感じ。 その意味でも本作の小川純子役以上に、必然的なはまり役はなかったのだと思う。第1話冒頭、阿部サダヲ扮する父・小川市郎に対して、「クソジジイ」、「クソチビ」と暴言を吐きまくる。痛快極まりない。 視聴者は圧倒される間もなく、このスケバンの魅力にすでに降伏してしまっている。レトロの申し子・河合優美ならば、1986年という舞台設定も何のその。遠い過去でもへっちゃら。あたしゃ、スケバンを地でいってんだからさ。とでも言いたげな濃いメイク。学生服の長いスカートを翻す河合の気迫に満ちた表情から伝わってくる。この純子役は、河合の才能に時代がやっと追いついたかのような印象さえある。

スケバンが似合う俳優は「希少価値が高い」

本作では、令和にまったくそぐわないハラスメント連発おじさんである市郎が、2024年にタイムスリップしてくる。とはいえ、このスケバンのきらめきを紐解くためには、もっと昔の作品に触れなければならないだろう。 スケとは女性を意味する俗語。バンは番長の略。スケバンというフレーズが、広く使われるようになったのは、東映製作・配給の映画『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』(1971年)がきっかけだといわれている。今どきスケバンが似合う俳優なんて希少価値がほんとうに高い。どんな題材も任しとけの職人的巨匠・鈴木文則監督による同作に河合が出演しても何ら遜色がなかったかもしれない。 八田富子が歌う主題歌「女番長ブルース」を口ずさむ河合を想像するのも面白いが、1970年代のスケバンだとさすがに古いか。何せ『不適切にもほどがある!』の純子は、スケバン流行も終わりに近づく1980年代後半を生きる。1986年2月リリース、年末には2年連続でレコード大賞を受賞したナンバー「DESIRE」の中森明菜を意識した前髪だと語っているくらいだ。
次のページ
“二面性”こそが最大の魅力
1
2
3
コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションでR&B部門を立ち上げ、企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆。最近では解説番組出演の他、ドラマの脚本を書いている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ