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ワークマンが“業績を下方修正”した理由。「アパレル業界」ゆえの苦しみが

人気の理由は「機能性×圧倒的な安さ」

そしてカジュアル化戦略を進める間、業績は著しく伸び、メディアでも頻繁にその様子が取り上げられました。20年3月期から23年3月期の業績は以下の通り推移しています。 【株式会社ワークマン(20年3月期~23年3月期)】 営業総収入:923億円→1,058億円→1,163億円→1,283億円 営業利益:192億円→240億円→268億円→241億円 上記はFC本部の業績ですが、実店舗における商品の総売上高を見てもカジュアル化路線の成功は明らか。同路線を始める前の18年3月期が797億円であるのに対し、23年3月期は1,699億円と2倍以上に膨らんでいます。カジュアル化が成功した主な理由は商品の優れた機能性とその安さにあります。作業着と同じような防寒性や撥水性はもちろんのこと、履きやすく滑らない靴は妊婦さんの間でも話題となりました。ファッション性を重視するアパレル店が多い中、機能性を重視したワークマンが注目を浴びた形です。コロナ禍でのアウトドア人気もある程度影響しているでしょう。 その上でワークマンは圧倒的な安さを実現しています。具体的には税込980円のポロシャツや1,990円のジャケット(MA-1柄)、2,900円のレディース撥水マウンテンパーカーなどがあげられ、相場としては他の店舗の半分以下の価格帯です。カジュアル化を進めたとはいえ機能性を重視するワークマンの商品は他のアパレル店ほど流行性を重視していません。海外の工場に対して10万着単位での大量発注が可能なほか、閑散期に生産させているため、低価格を実現しています。

業績を下方修正…アパレル業界に乗り込んだ以上やむを得ないか

ワークマンは2030年を目途に1,500店舗体制を目標としています。22年3月期には離れてしまった職人を取り戻そうと「ワークマンプロ」をオープンし、原点通りの店舗を新業態として始めました。 カジュアル化を既定路線とし、1,500店舗の内訳としてはワークマンプラスを900店舗、#ワークマン女子を400店舗まで伸ばし、従来型のワークマンを200店舗まで減少させる方針です。しかし、予想通り展開できていないのか、24年3月期3Qで今期予想を下方修正しました。営業総収入の予想値を1,366億円から1,350億円に変更しています。さらに既存店売上高の落ち込みも問題です。23年3月期の後半から前年割れが目立ち始め、今期は1月までの累計では98.1%。既存店客数も落ち込みつつあり、カジュアル化した店舗が飽きられ始めているようです。 他のアパレル店ほど流行性を問わないとはいえ、一般客をターゲットとする以上、需要の変化には対応し続けなければいけないのは、避けられない問題と言えます。流行に乗れるのか、または先導役になれるのかどうかが、ワークマンの今後を左右することになるでしょう。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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