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「本当はそんな余裕ないのに…」賃上げせざるを得ない中小企業の悲鳴。“地方で月給30万円”でも人が集まらない

新入社員を雇うためベテラン社員を解雇

賃上げ

若手人材確保のため泣く泣く賃上げ。本当はそんな余裕なし(47歳・経営者)

 人手不足による防衛的賃上げは運送業界に限った話ではない。WEB制作会社を経営する磯田隆也さん(仮名・47歳)も、4月から昨年よりも月給を2万円賃上げし、求人広告を出す予定だ。 「ネット広告を制作する従業員30人規模の会社ですが、うちみたいな中小企業は大手からの仕事を断れないので、常に人手不足。それで月給18万円で求人を出そうとしたら、転職サイトの担当者に『その給料では法令違反になるので掲載できません』と言われ、泣く泣く月給20万円で掲載しました」  しかし、賃上げ分を補塡するために「思いきったリストラを実施できた」という良い側面も。 「正直、年収360万円の働かない中年を雇い続けるより、年収240万円の新入社員を迎えたほうが利益率はいい。最近、女性社員がベテランの男性社員にセクハラをされたと訴えてきたので、これ幸いと速攻で解雇しました。これであと2人分、人員を確保したいですね」  賃上げする中小企業が増えたといっても、そこにはこんなカラクリがある。日本商工会議所の発表によると、賃上げの対象のうちパートタイム労働者が83.3%と最多で、正社員の賃上げは25.4%にとどまる。

「社員よりバイトのほうが稼げる」

賃上げ

賃金UPはパートだけ!社員はカツカツで長時間労働地獄です(飲食店長・47歳)

 飲食チェーン店長の坂田智彦さん(仮名・42歳)も「バイトのほうが自分よりも高収入」とため息をつく。 「アフターコロナで客足が戻り、ありがたいことに会社の業績は右肩上がり。しかし、私の給料はかろうじてボーナスが数万円増えた程度でほぼ据え置きです。  コロナの時短営業が完全終了したことで、勤務時間は増えていき、現在は一日17時間・月26日ほど店に立っていますが、時給換算すると1200円に満たない。一方でアルバイトは深夜時給1600円。とはいえ、今いるアルバイトにやめられたら困るので、とにかく彼らのご機嫌取りに徹しています」
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身を削った賃上げの先に起こること
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