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32歳自閉症の息子を抱えるシングルマザーが「障害者手帳を取ったら人生負け」の考えを改めたワケ

特に営業マンにとってはつらい病気

 佐藤さんは社会に出た後に、結婚・離婚を経験し、現在は障害がある子を抱えたシングルマザーだ。離婚後、生命保険会社の営業職に就くが、その時に潰瘍性大腸炎を抱えながら働くことの大変さを感じた。 「生命保険の営業って、1年目は何とかなるんですが、2~3年目は大変になるんです。契約を取らなきゃならないというプレッシャーから辞める人も多いです。私はストレスから、辞めたいと思った時に再発しています。潰瘍性大腸炎の下痢は、普通の下痢とは違います。粘液性の下痢をしますし、血も出ます。商談中にトイレにこもってしまったら、仕事になりませんよね。だから、特に営業職の人は、苦労すると思います」  潰瘍性大腸炎の原因ははっきり分かっていないが、再発のきっかけにストレスも関わっているという。そして、患者数は特に働き盛りの40代男性に増えている。

子の障害と障害者手帳や年金

佐藤加根子

32歳の自閉症の息子と佐藤さん

 何があっても前向きに生きていける自信がついた佐藤さんは、シングルマザーで障害のある32歳の息子を抱えながらも仕事を続け、今の法人を立ち上げることになった。 「今は32歳になった自閉症のある息子と暮らしています。自閉症とは脳の機能障害で、一見、障害と分からない人も多いです。そのため、小さい頃は『親の育て方が悪い』『愛情が足りない』と言われ、ツラい思いをしたこともありますが、障害者手帳の恩恵を受けて、福祉サービスを利用しています。 『障害者手帳を持ったら人生負け』と思っていた私も、今はそうは思いません。私は取らないという選択肢を選び、それがいい方向に進みました。障害者手帳を持ったり、障害年金を受給したりすると、そんな自分に引け目を感じる人も多いです。だけど、息子の育児を通じて、福祉のサポートを受けられることも知りました。障害もさまざまです。型にはめないことが一番、大切だと思います」  潰瘍性大腸炎と同じように、実は障害があるけれど、外見からは分からない内部疾患をもつ人はたくさんいる。人知れず悩んでいる人は多いが、その人生は不幸なだけとも限らない。 <取材・文/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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