2024年「冬ドラマBEST5」最終回まで観て選定。4位『さよならマエストロ』、『厨房のアリス』は3位
17本あった冬ドラマが全て終わった。全作品の最終回まで観た筆者が、ベスト5を選んでみたい(※各ドラマのストーリーのネタバレを含みます)。
永野芽郁(24)が主演し、山田裕貴(33)が相手役を演じたラブストーリー。キーワードは究極の自己犠牲だった。それが払える相手は肉親以外だと深く愛する人のみだろう。しかも若いうちだけではないか。
なので、世代によって受け止め方が異なるドラマだったはず。若い世代をターゲットとする月9だから、制作者側はこの物語を紡いだのだろう。
永野が演じたのは逢原雨。パティシエになる夢が破れた挫折の人だった。山田が扮したのは花火職人・朝野太陽。しかし、視覚障がいがあり、職人を続けるのは難しかった。この2人が10年ぶりに再会するところから物語は始まる。雨にとって太陽は高校の2年先輩であり、大切な人だった。
2人が再び顔を合わせた直後、太陽は交通事故に遭い、死の淵に立つ。雨が泣きじゃくっていると、あの世からの案内人(斎藤工)が現れ、心(五感)を差し出したら、太陽を助けてやるという。心は五感を差し出すことを約束する。こういった出だしのドラマや映画は過去になく、ホラー調の作品になるのかとも思ったが、実際には違った。
雨が犠牲を決心したことで太陽は生還する。一方で雨は五感を次々と失うが、太陽には案内人との約束を隠す。恩に着せるような言葉を口にした途端、自己犠牲は自己満足になってしまうからだ。同時に太陽にとっては重荷になる。
太陽は五感を次々と失う雨を支え続けた。最後になって、自分の命を差し出せば雨の五感が戻ると案内人から伝えられると、躊躇せずに自分の死を選ぶ。太陽もどんな犠牲も厭わぬほど雨を愛していた。
ラブストーリーにも実際の恋愛にもミーイズムが当たり前になっている時代だから、このドラマが提示した愛の解釈には意義があったと思う。
5位『君が心をくれたから』(フジテレビ)
ホラー調の作品になるかと思いきや
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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