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2024年「冬ドラマBEST5」最終回まで観て選定。4位『さよならマエストロ』、『厨房のアリス』は3位

4位『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(TBS)

 こちらのキーワードは再生。主演の西島秀俊(53)が演じた夏目俊平は世界的マエストロ(指揮者)だったが、音楽に没頭するあまり、5年前に娘でバイオリニストだった響(芦田愛菜)を深く傷つけてしまう。それが基で父娘の関係は崩壊。俊平は憔悴し、マエストロを辞めた。  壊れた4つのモノの再生までの物語だった。まず俊平と響の父娘関係、バイオリニストとしての響、帰国した俊平が率いたポンコツ楽団「晴見フィルハーモニー」、そして世界的マエストロとしての俊平。よくぞ再生ばかりを混ぜ合わせたものである。

西島秀俊の演技力が光った

 父娘関係はなかなか改善されず、一方で響はバイオリンを再開しようとしないので、物語の中盤では焦れそうになった。しかし、制作者側にとっては計算ずくだったのだろう。父娘関係が早々と元通りになり、響が簡単に音楽を再開していたら、都合が良過ぎた。そもそも世界的マエストロの俊平が、地方オーケストラを率いることが現実離れしているのだから、ほかの部分は回り道を繰り返すくらいで良かった。  海外での評価も高い西島の演技はやはり出色だった。誰にでも限りなく優しく、高校球児から音楽界に転じながら大成功を収めるという奇跡のような人物を、実在するかのように見せた。こじらせ系の芦田には少し違和感もおぼえたが、女優として大成するには溌剌とした役ばかりをやっているわけにはいかないだろう。  最終回には俊平がマエストロとして再び世界に羽ばたく。父娘関係が回復した響は立て直された晴見フィルハーモニーに加わった。タイトルはきれいに回収された。
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3位 自閉スペクトラムの天才料理人を門脇麦が好演
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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