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2024年「冬ドラマBEST5」最終回まで観て選定。4位『さよならマエストロ』、『厨房のアリス』は3位

3位『厨房のありす』(日本テレビ)

番組公式HPより

 門脇麦(31)が演じた主人公の八重森ありすは天才的料理人。自閉スペクトラム症というハンデがあり、その特性から頑固でこだわりが強い。コミュニケーションも苦手だ。一方で純粋かつ努力家。他人を思いやる気持ちも強い。  まず、ハンデを個性と捉えたところが光った。日本のドラマはハンデのある人は不幸な存在と決めつけがちだが、それは思い込みと物語上の都合に過ぎない。  ありすはレストラン「ありすのお勝手」で料理の腕を振るう。並外れた化学の知識と驚異的な記憶力によって、訪れる客の健康状態に最適な料理を提供し、喜ばれた。「どれだけ食材を用意しているの?」とも思ったが、そこはファンタジー。

ミステリー要素が濃くなった終盤戦

 やがて、ありすの母親の死の真相究明と実父探しというミステリー要素が色濃くなる。レストランのホール担当・酒江倖生(永瀨廉)の父親を死に追いやった理由の解明もあった。もっとも、全体の作風は一貫してハートフルコメディ。門脇、永瀨、ありすの父親役の大森南朋(52)らの演技が巧みだったから、ミステリー要素が無理なく溶け込んだ。  門脇のコメディエンヌとしての才能がいかんなく発揮された。セリフを口にしないときも動作で笑わせてくれた。まるで小動物のような小走り、うろたえ方、おびえが傑作だった。
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2位 働くことの意味を考えさせられるNHKドラマ
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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