スポーツ

ドーピング検査をきっかけに薬学の道へ。異色の経歴を持つ元ガールズケイリン選手の挑戦

選手時代の体験が彼女を薬学へと導く

競輪

現役時代、ホームバンクの宇都宮競輪場での練習風景。独走(1000m)測定中。練習について橋本さんは「本当にきつかったです。でも、辛くなったとき、あの時の辛さを乗り越えた感覚が思い出されます」と語った

 そして2018年に晴れて選手としてデビューするも、体調不良による欠場が続き、成績も奮わず引退。その後、選手時代に体験したある出来事がきっかけで、薬剤師を目指すことになる。 「引退直前のレースの時に、ドーピング検査を受けたんです。ドーピング検査って選手からすると少し面倒な制度じゃないですか。でも、ドーピングってやっぱり身体に悪いし、結果的には選手を守るための検査なんですが、『なぜ飲んだらダメなのか?』、『どんな副作用があるのか?』といった疑問に対して、ちゃんと説明してくれる人がいなかったんです。じゃあ、私がそれをやろうと思い薬学部に進みました」  薬に関する知識が豊富でアドバイスできる人は、すべてのスポーツにとって必要だが、特に競輪はその必要性が高いと感じたそうだ。 「チームで戦うスポーツには専属のスポーツドクターがいたりしますが、競輪は個人事業主だから本人任せで、『自分で調べてください』となってしまいます。だから、個人でも相談できる環境が必要だと思いますし、競輪選手のドーピングに限らず、一般の人でも薬に関する正しい知識や知りたい事があるんじゃないかと思ったので、最近X(旧ツイッター)を始めて様々な情報を発信しています

今までにないモノを生み出したい

 薬剤師を目指して大学に進学した橋本さん。だが、大学生活を通して様々なものに出会ったことで、やりたいこと、目指したいことが最近になって少々変化してきたという。 「薬学部に入って1年生の頃は、卒業したらすぐに就職して、薬を取り巻く新しいシステムを作りたいと思っていたんです。でも、2年間いろいろとやっているうちに研究に興味を持ち、今はマウスを使った体内時計に関する研究をしています」  今後は薬剤師の免許を取りつつも大学院に行って研究を続け、研究テーマに関しては柔軟性を持って選んでいくそうだ。 「先日、大学院生の方からアドバイスをもらったのですが、『まだ薬学部が4年間も残っているから研究に関して今のテーマに固執せず、いろんな分野に目を向けた方がいい。今の段階で絞っちゃうのはもったいない』と言われまして。だから、もしかしたら数年後にまた全く違うテーマの研究をしているかもしれませんが、どういう道を進もうが、最終的には新しいモノを生み出して、この世に残したいですね
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努力する素晴らしさを教えてくれた競輪
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パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。
X(旧Twitter):@sagyosakurai

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