ドーピング検査をきっかけに薬学の道へ。異色の経歴を持つ元ガールズケイリン選手の挑戦
競輪界から薬学の世界へ。選手を引退した後に、まったく畑違いのステージに転向した一人の女性がいる。それが橋本蒔子さん(25)だ。現在は、国際医療福祉大学薬学部の学生として勉強と研究の日々を送っている。
高校生時代も学業メイン、スポーツ未経験で競輪の世界に飛び込むなど、異色のルーツを持つ彼女に、選手を目指したきっかけから、薬学の道へ進むことになった経緯、さらには今後の目標や夢についてお話を聞いてみた。
高校生時代は勉強漬けだった橋本さん。2年生の時には宇都宮大学で行われていた高校生対象の化学の研究プログラムに参加するなど、スポーツとは一切無縁の毎日を送っていた。そんな彼女が競輪選手になろうと思ったのは、中学生時代の先生の些細な一言であった。
「高校2年生まで勉強と研究の日々だったのですが、『本当にこのままでいいのか』と、卒業後の進路に関して悩んでいたんです。そこで、中学時代の先生に相談しようと思い、当時、ノリと勢いで買ったクロスバイクに乗って会いに行ったら、『自転車が好きなら競輪選手っていう道もあるんじゃない?』と言われまして」
競輪選手と言えば、親族に選手がいたり、両親が競輪好きだったりと、競輪が身近な存在の人や、何かスポーツをやっていた人が目指すことが多いが……。
「後々で聞いたのですが、実はその先生、競輪に関しては存在を知っている程度で、ほぼ冗談で言ったらしくて……。だから、ホントに競輪選手になるなんて思ってもいなかったし、むしろ申し訳なかったと言われました(笑)。でも、その日のうちに競輪についてネットで調べてみたら、女性でも選手になれる、選手になるには競輪学校に入る必要があるなど、いろいろと知っていくうちに興味を持ち始めました」
それまでの人生において一切関わりがなかった競輪。普段から自転車には乗っていたものの、あくまで移動手段の一つでしかなかったが、もともと自転車に対して惹かれる部分があったという。
「進路に関して悩んでいた時、クロスバイクに乗っていてフト思ったんです。『あっ、これに乗っていれば前に進めるのか』って。当たり前の話ですけど(笑)。前にしか進まないってところに惹かれて、これに乗っていれば気持ち的にも前向きになれる気がしたんです。しかも、ガールズケイリン選手の募集要項を見ていたら、他のスポーツから転向してくる人も多いって書いてあったし、競輪を教えてくれる学校があって、そこに入って一から学べるなら、スポーツ経験が乏しい私でも何とかなるのかなと思っちゃって。まあ、現実はそうじゃなかったですけど(笑)」
競輪学校を専門学校的な存在と捉え入学を目指したわけだが、入学試験に向けた練習方法は実に勉強好きな彼女らしいやり方だった。
「競輪学校に入るために通い始めたスポーツジムでは、スタッフの方に試験内容を伝えて、これをクリアするにはどんなメニューをこなせば良いか聞いていました。なので、私だけやることが書いてあるノートや本を持ち込んで、やった回数をメモしていたので、隣のお客さんに『なんだこの子?』みたいな目で見られることも多かったです(笑)」
冗談交じりの一言を真に受けて
好学な彼女らしいやり方で一発合格!
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。
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X(旧Twitter):@sagyosakurai
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