更新日:2024年04月19日 11:50
ライフ

「ただ勉強ができるだけ」東大から大手企業に就職、MBAも取得した38歳が、自分を“弱者男性”だと思うワケ

弱者の新たな概念が論じられ始めた

意外にも、高学歴だからこそ弱者性を感じやすい面もあるようだ。 「頑張って勉強していい大学に入ったという実績があるだけに、コミュ力の高い人ばかりが優遇され、就職や恋愛で評価されない状況がいっそう辛くなる。このように、他者と比較して望むような結果が得られず、憤りや不満を感じる状態を『相対的剥奪感』と言います」(伊藤氏)
[高学歴弱者]の肖像

相対的剥奪感の調査事例。第2次大戦中のアメリカの憲兵隊と航空隊を比較し、昇進率の高い航空隊のなかでも、特に高学歴の兵士が昇進制度について不満を感じている割合が高いことが示されている。(『アメリカ兵』調査研究より作成)

近年、弱者の新たな概念が論じられ始めているという。 「福祉国家において、弱者は経済的弱者と人権的弱者を指します。しかし、1990年代から欧米で新たに『排除』という概念が生まれました。多種多様な弱者性が複合して社会から孤立・除外されてしまうこと。高学歴男性は社会の中心にいるからこそ、弱者性がより悪目立ちしてしまうわけです」(伊藤氏) 学歴だけが価値ではない。そんな論調が強まるほど、高学歴弱者は生きづらくなる。

弱者男性にまつわる社会の動き

1984年 中曽根元首相が教育改革に着手する 1989年 東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件により「コミュ力のない人=オタク」のステレオタイプが定着 1992年 「だめ連」が「モテない、職がない、うだつが上がらない」だめな男の交流の場をつくる 1993年 就職氷河期が到来 2002年 ゆとり教育開始 2007年 赤木智弘氏が非正規雇用における弱者男性の存在を論じる 2008年 リーマンショックで派遣切りが問題化 2019年 「有害な男らしさからの解放」が議論される 2023年 弱者男性支援NPO「日本弱者男性センター」発足
[高学歴弱者]の肖像

トイアンナ氏

【トイアンナ氏】 ライター・経営者。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当後、独立。弱者男性を生み続ける日本の現在を、初めてデータで分析した新書『弱者男性1500万人時代』。4月24日に扶桑社より発売
[高学歴弱者]の肖像

伊藤昌亮氏

【伊藤昌亮氏】 成蹊大学文学部教授。メディア研究。『世界』に寄稿した「ひろゆき論」で弱者の階級闘争を論じる。著書に『ネット右派の歴史社会学』など 取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/サレンダー橋本
1
2
弱者男性1500万人時代 (扶桑社新書) 弱者男性1500万人時代 (扶桑社新書)

データで読み解く“弱者男性国家”ニッポンの現在

おすすめ記事
ハッシュタグ