「ただ勉強ができるだけ」東大から大手企業に就職、MBAも取得した38歳が、自分を“弱者男性”だと思うワケ
―[[高学歴弱者]の肖像]―
貧困、障がい、宗教二世など、多様な困難を抱える男性をあらわした“弱者男性”という言葉。弱者男性当事者の声を集めた話題の新書『弱者男性1500万人時代』で、ライターのトイアンナが、過少評価されてきた弱者男性たちの実態を明らかにするため、これまで数量的に定義されていなかった「弱者男性の人口」の推計に踏み切った。
その結果、「最大で1500万人」、つまり男性の約24%、日本人の8人に1人は何らかの弱者性を抱えていることがわかった。そのなかには、一見“強者”と思われがちな高学歴男性もいる。共感が得られない、孤独な生きづらさの正体に迫った――。
東大卒でも弱者!? なぜエリートなのに社会的に弱いのか
東京大学卒の飯島亮さん(仮名・38歳)は、新卒で日本を代表する大手企業に就職。社費留学でアメリカに渡り、MBAを取得している。そんなエリートがなぜ“弱者男性”という言葉に共感するのか。
「学歴は確かにいいですが、ただ勉強ができるだけ。小学生のころから、言いたいことが我慢できず、授業中に先生が矛盾したことを話すと、つい指摘してしまう。集団行動が苦手でクラスで浮いていて、いじめられたことから、ひたすら勉強を頑張って東大に入りました」
飯島さんは、相手の表情や気持ちを読み取ってコミュニケーションをとることができない。診断は受けていないが、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向を自覚している。とはいえ、エリート街道を歩んでいるのだから、そのまま突き進めばいいかと思いきや……。
「会社の“360度評価”で、部下から『冷たい印象で、数字に細かい。二度と一緒に働きたくない』と書かれてしまったんです。人事評価のマイナス要因になりました」
このアンバランスさは、家庭でも深刻な問題に発展。
「妻は、男らしさや稼ぎを僕に求める一方で、男女平等を要求する“いいとこ取り”をしてくるんですね。そういった発言が理解しがたいので、妻の言葉は片耳にイヤホンをつけて、有意義な情報をインプットしながらでないと、聞く気が起きない。それで実家に帰る、離婚すると言われても、自分の行動を改められない。“合理的な意見以外は価値がない”と捉える、自分ルールを崩せないんです」
ぎょっとするような振る舞いも、性格の良しあしではなく、自分のルールと違う価値観の人間のことを理解しづらく、周りに合わせるのが苦手なASDの特性と重なる。
「これでも社会に適応しようと思って悩んでいます。でも、周りにいる人は、私と違って完全無欠のエリートばかり。育ちや性格がよくて、運動もできて、頭もいい。私のような“学歴だけのエリート”って、今どきあんまりいないんです。そんな人にこの話をしても、正論を言われてしまうだけだなと思って、諦めています」
弱者男性という概念は政治と教育の産物
弱者男性への調査で挙げられた「弱者性」のカテゴリー
a 障がい者
b 信者の家族
c 引きこもり
d 介護者
e 虐待サバイバー
f 犯罪被害サバイバー
g 多重債務者の家族
h 容姿にハンディのある人
i 貧困
j 性的マイノリティ
k 境界知能
l 非正規雇用・無職
m コミュニケーション弱者
n 3K労働従事者
o 在日外国人、民族的マイノリティ
p きょうだい児
「小樽商科大学の池田真介教授の協力で、このカテゴリーに一つ以上当てはまる男性の数を推計すると、最大で1500万人の弱者男性がいることが明らかになりました。学歴だけ見れば“強者”でも、家族の借金返済で貯金を使い果たしたり、介護に追われて疲弊するなど、さまざまな事情で弱者になってしまう。特に年収が低く、人間関係に恵まれていない人が弱者だと自認しやすい傾向にあります」
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『弱者男性1500万人時代 (扶桑社新書)』 データで読み解く“弱者男性国家”ニッポンの現在
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