仕事

51歳で出合ったライターという“天職”。50代の新人が“前職のスキル”を活かして売れっ子になるまで

WELQ騒動がきっかけでWebライターを知る

吉村智樹

「WELQ騒動がきっかけだった」と吉村さん

「その時点で50歳目前だったので、転職活動をしたところで雇ってくれる会社があるのだろうかと悩んでいました。そんなときに、“Webメディアで記事を書くとお金がもらえる”と聞いて。知るきっかけとなったのは、2016年のWELQ(ウェルク)騒動でした」  WELQ騒動とは、DeNAが運営する健康・医療情報サイト「WELQ」が、著作権侵害と不正確な情報提供で大きな批判を受けた事件だ。  たとえば、「肩こりは幽霊が原因」と書かれた記事が有名だが、キュレーション(※インターネット上の情報を独自の基準で収集・選別・編集し、情報に新しい価値を付加した状態で共有すること)の名のもとに、いわゆる“パクリ記事”、“情報元が不正確なコタツ記事”が大量に掲載されており、テレビでも取り上げられる社会問題となった。 「WELQ騒動があって、Webの世界からパクリ記事やインチキ記事を一掃しなければならないと、Webメディアのあり方に変化が生まれました。そこで、一次情報に触れられる“取材記事”にスポットライトが当たるようになったんです」  出版社やテレビ局など、報道機関が運営するニュースサイトと違い、一般企業によるWebメディア(オウンドメディア)は、SEO(※検索エンジンで上位表示させるための施策)を意識したキュレーション記事で成り立っている場合が多かった。それまで“記事作成のために取材する”という前提がなかったWebメディアにおいても、WELQ騒動を機に取材できる人材が求められるようになったのだ。

SNSのライター募集を見て応募

「急にスポットが当たったものだから、『誰か取材できるライターはいないか』と業界内が人手不足に陥ったんですね。そのときに僕は運よくチャンスを掴めた。クラウドワークスなどのクラウドソーシングサイトに登録しようと考えていた矢先、Xでとある投稿を見つけたんです」  吉村さんの目に留まったのは、「そろそろライターを募集しようかな」という投稿。投稿主は、NTTレゾナントが運営する『いまトピ』の編集者だった。 「公式募集ではなく単なる個人のつぶやきでしたが、すぐに『記事の企画書を書いたから見てほしい』とメールを送り、編集者に会いに東京まで行きました。ラッキーだったのが、ネット界の超大御所が初めての担当編集者になってくれたことです。『僕が見た秩序』という有名な個人サイトを運営していた吉永龍樹さんと、『探偵ファイル』の7代目編集長だった大住有さん。知る人ぞ知るふたりです」  古くからインターネットに触れている人なら、一度は聞いたことがあるだろう有名サイト。そんな大物相手に、吉村さんはいくつかの企画を提案した。そして採用されたのが、京都にまつわる取材企画だ。
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放送作家時代のボツネタをフル活用
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0

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