仕事

51歳で出合ったライターという“天職”。50代の新人が“前職のスキル”を活かして売れっ子になるまで

放送作家時代のボツネタをフル活用

吉村智樹

吉村さんは「今の仕事はやめたいと思ったことがない」と話す

「“京都のもうひとつの一面”を取り上げる企画を出したら、『関東の人間は京都について詳しくないから、毎週やってほしい』と言われました。初仕事で、いきなり週1〆切です。でも、放送作家時代のボツネタを山ほど抱えていたので、全部ここで使えるなって思ったんですよ。京都に住んでいる非常に変わった人物、変わったお店、京都在住の著者さん。そういった、寺社仏閣や観光以外の京都ネタをいっぱい持っていたんです」  一風変わった京都ネタを毎週取材して書いていくうちに、いくつかの記事がバズを生んだ。 「放送作家時代にボツにされたネタだったので、『ほら見ろ! 今までテレビでボツにしやがって! バズるネタやないか!』って勝利を味わった気分でした(笑)」  実績を重ねるうちに、次へのステップが訪れる。あちこちのメディアから執筆依頼が届くようになったのだ。 「リクルートを皮切りに、いろんなWebメディアから声がかかるようになりました。取材できるライターが枯渇していた頃だったので、僕のように毎週取材しているライターは貴重だったのかもしれません。オファーをただ待つだけでなく、書いた記事を実績として営業をかけていく。それを繰り返して今に至ります」

ミドルエイジからの転職に不安は?

 “書ける場所”との出合いを逃さないよう、ライター募集の情報チェックは毎日欠かさず行っているという。 「たとえ体調が悪くて何もできない日があっても、企画書だけは毎日書いて、『このメディアならハマる』と感じたら送っていますね。ライターを始めたとき、何があっても企画書だけは書き続けようと決意していたんです。これが今の生活や仕事のあり方にもつながっています。だから、まだ世に出していない企画がいっぱいあるんですよ」  とはいえ、収入もゼロからのスタート。仕事が軌道に乗るまで不安はなかったのだろうか。 「転職を決めたときは崖っぷちだったので、不安どころか燃えていましたね。むしろテレビの仕事を辞めるからこそ、ライターで安い仕事はできないと思っていました。偉そうな新人ですよね(笑)。いざ始めてみたら予想していたくらいのギャランティだったので、安心した部分もあります」

51歳にして出合った“天職”

 放送作家の仕事で培ったものを見事に活かし、Webライターとして日々あちこちを取材して回る吉村さん。ただ取材して書くだけでなく、カメラマンも兼任することで、ライターとして付加価値を持たせることにも成功した。そんな彼は、「書くことが本当に楽しい」と目を輝かせる。 「つらい経験もあったけど、今の仕事はやめたいと思ったことがないんですよ。楽しくてしょうがない。51歳にして天職に出合った気分ですね。年齢なんて関係ないから、挑戦したいことがある人は諦めなくていいですよって伝えたいです」 <取材・文/倉本菜生>
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0
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